住宅ローン控除(減税)の基本
住宅ローン控除(減税)は年末の住宅ローン残高の0.7%を最大13年間にわたり所得税(引ききれない分は一部住民税)から控除(減税)される制度です。単純計算では、住宅ローンの金利が0.7%未満であれば「借りることで利益が出る」計算になりますが、2026年は日銀の利上げにより変動金利でも0.7%を上回る水準が主流になっており、かつてのような「控除で利益が出る」状態は成立しにくくなっています。それでも税負担を大きく減らせる制度であることに変わりはありません。
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住宅ローン控除(減税)とはなにか?
正式名称は「住宅借入金等特別控除」といいます。しかし、住宅借入金等特別控除だと舌を噛みそうなので一般的には「住宅ローン控除」と呼ばれています。 借り入れした住宅ローンの年末時点の残高の0.7%分、その年払った所得税の還付を受けられたり、翌年支払う住民税が減ったりする制度です。年末というのは12月末のことです。 控除期間は、新築住宅(長期優良住宅・低炭素住宅・ZEH水準・省エネ基準適合住宅)で最長13年です。中古住宅は原則10年ですが、令和8年度税制改正で、省エネ性能の高い中古住宅は13年に拡充されました。 また、この制度は2025年末でいったん期限を迎える予定でしたが、令和8年度税制改正で5年間延長され、2026年1月1日から2030年(令和12年)12月31日までに入居した場合も適用されます(国土交通省・2026年8月時点で確認)。 新築や中古物件の購入だけではなくリフォームをした場合にも、一定の条件を満たせば住宅ローン控除の対象になります。 ただ、マイホームを購入したりリフォームをして住宅ローンを借りれば全部が全部住宅ローン控除の対象になるかというとそうではありません。では、どんな住宅ローンが対象になって、どういう住宅ローンだと対象にならないのかをご紹介します。住宅ローン控除の対象になる住宅ローン
住宅ローン控除の対象になる住宅ローンは一般的な銀行で借りる住宅ローンやフラット35などの住宅ローンです。普通に金融機関と呼ばれるところから住宅ローンを借りれば問題なく住宅ローン控除の対象になります(物件などの条件は満たしているものとする) なお、金融機関以外の公務員共済組合などからの借入でも対象になりますので、住宅ローン控除の対象になるのか税務署のコールセンターに問い合わせをすると良いでしょう。住宅ローン控除の対象にならない住宅ローン
住宅ローン控除の対象にならないのは一般的な金融機関から借りたものではない住宅ローンです。 例えば、親や親族から借りた住宅ローンなどは対象になりません。 そのため、親や親族、もしくは職場から住宅ローンとしてお金を借りて家を建てる場合は、住宅ローン控除は受けられないので、受けられなくなる住宅ローン控除の金額と支払わなくて良くなる住宅ローンの利息を計算してどちらが有利になるのか計算して決断しましょう。住宅ローン控除を受けるための条件
住宅ローン控除を受けるためにも条件があります。2026年8月時点の主な条件をまとめました(国土交通省・国税庁で確認)。- 合計所得金額2,000万円以下。所得なので年収ではありません。年収から各種控除を引いた後の額が2,000万円以下である必要があります
- 住宅ローンの返済期間(償還期間)が10年以上であること
- 床面積40㎡以上であること。令和8年度税制改正で、新築・中古とも従来の50㎡以上から40㎡以上に緩和されました(ただし合計所得金額1,000万円超の方や、子育て世帯等の借入限度額上乗せを使う方は50㎡以上が必要です)
- 住宅ローンの借り主が自分で住むこと。引き渡しまたは工事完了から6か月以内に入居する必要があります。自分以外の誰か、例えば子供や親が住む家を自分名義の住宅ローンで借りる場合は対象になりません
- 中古住宅の場合は1982年(昭和57年)1月1日以降に建築された住宅(新耐震基準適合住宅)であること。以前の「木造は築20年以内・マンション等の耐火建築物は築25年以内」という築年数ルールは廃止され、現在は建築年で判定します。1981年以前の建物でも耐震基準適合証明書等があれば対象になります
- リフォームの場合、増改築費用が100万円以上であること
住宅ローン控除の控除率
現在、住宅ローンの控除率は一律で0.7%になっています。つまり、12月末時点での残高の0.7%の金額分、所得税と住民税が還ってくるということです。 ※2021年までに入居した方は控除率1%など、入居した年によって適用される制度が異なります。この記事では2022年以降(現行制度)で説明します。住宅ローン控除の限度額
住宅ローン控除は住宅ローンの年末残高の0.7%が返ってくる制度ですが、控除の対象になる残高(借入限度額)に上限があります。1億円の残高があれば70万円の税還付を受けられるか?というとそうではありません。 2026年(令和8年)以降に入居する新築住宅の借入限度額は次のとおりです(国土交通省で確認・2026年8月時点)。| 住宅の性能 | 借入限度額(一般) | 子育て世帯・若者夫婦世帯 | 控除期間 |
|---|---|---|---|
| 長期優良住宅・低炭素住宅 | 4,500万円 | 5,000万円 | 13年 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円 | 4,500万円 | 13年 |
| 省エネ基準適合住宅 | 2,000万円 | 3,000万円 | 13年 |
住宅ローン控除でいくら所得税と住民税が返ってくるのかを計算する方法
それでは、住宅ローン控除で一体いくら所得税が返ってきたり住民税が安くなるのかを計算していきます。ここは「FPに相談すると実際にやってもらえる計算」を、ご自身でできるように順番に説明していきます。1.年末の住宅ローン残高を計算する
住宅ローン控除の金額は住宅ローンの年末残高に0.7%をかけて計算します。そのため、まずは住宅ローンの年末残高を把握しましょう。 すでに借りている方は、金融機関から届く返済予定表(償還予定表)に各回返済後の残高が載っています。毎年10月〜11月ごろに金融機関から届く「年末残高証明書(残高等証明書)」でも確認できます。 これから借りる方は、住宅金融支援機構「住宅ローンシミュレーション」などで借入額・金利・返済期間を入力すれば、毎月の返済額と残高の推移を試算できます。 ここでは、次の条件で計算を進めていきます(金利は試算用の一例です)。- 借入額:3,000万円
- 返済年数:35年
- 返済方法:元利均等返済(ボーナス払いなし)
- 金利:年1.5%(全期間固定と仮定した試算例)
- 返済開始:2026年1月
2.住宅ローン残高に対して控除率0.7%を掛ける
各年末の住宅ローン残高がわかったら、それに控除率0.7%をかけます。 1年目の年末残高は約2,934万円ですから、0.7%をかけると約205,000円。これが1年目の「住宅ローン控除の対象額」です。ただし、この金額がそのまま戻ってくるわけではありません。実際に控除される金額はあなたが納めている税額が上限になるため、続けて計算していきましょう。3.住宅ローン控除対象額から所得税を引く
住宅ローン控除は、控除対象額からまず所得税を差し引いていきます。 ここでは、その年の所得税が10万円の会社員の方を例にします(実際の所得税額は年収だけでなく扶養や各種控除で変わります。源泉徴収票の「源泉徴収税額」で確認してください)。- 205,000円 − 100,000円 = 105,000円
4.所得税を引いた後の住宅ローン控除対象額から住民税を引く
所得税を引いてまだ控除対象額が残る場合は、翌年度の住民税から差し引かれます。 ただし、住民税から控除できるのは前年の課税総所得金額等の5%・最高97,500円までという上限があります(2022年=令和4年以降に入居した場合。総務省・2026年8月時点で確認)。 今回の例では、残っている控除対象額は105,000円ですが、住民税からは最大97,500円までしか控除できないため、差額の約8,000円分は控除されずに余ります。 余った控除額を翌年以降に繰り越すことはできません。余った住宅ローン控除額は消えてなくなります。 そこで、単純に住宅ローンを借りるのではなく、住宅ローン控除対象額を余らせないような住宅ローンの借り方を考える価値が出てきます。 ※以前の制度(2021年までの入居)では住民税の上限が136,500円だったため、古い記事やパンフレットと数字が違うことがあります。現在の上限は97,500円です。住宅ローン控除の1番お得な利用方法
それでは、住宅ローン控除対象額を余らせず、上手に住宅ローン控除を利用する方法についてお伝えしていきます。夫婦共働きの場合は夫婦それぞれの名義もしくは連帯債務で住宅ローンを借りる
1人で住宅ローンを借りて控除額が余るのならば、夫婦2人で住宅ローンを借りる(ペアローン)、もしくは連帯債務で借りることで、控除対象額から差し引ける所得税・住民税の枠を2人分にして余らせないようにするという方法です。 具体例を見ていきましょう。先ほどの例(3,000万円・35年・金利1.5%の試算例)で、ご主人1人だと1年目の控除対象額は約205,000円のうち約8,000円が余ってしまいました。 そこで、3,000万円をご主人2,400万円、奥さん600万円に分けて借りたとします。住宅ローンを2,400万円借りたご主人の場合
ご主人の1年目の控除対象額は、年末残高約2,347万円×0.7%=約164,000円です。- 所得税:164,000円 − 100,000円 = 64,000円
- 住民税:64,000円 < 97,500円 → 全額控除OK
住宅ローンを600万円借りた奥さんの場合
奥さんの1年目の控除対象額は、年末残高約587万円×0.7%=約41,000円です。パートではなく正社員などで所得税・住民税を納めていれば(例:所得税3.5万円)、こちらも全額控除できます。 夫婦合計では約205,000円をフルに使い切れる計算になります。この例(所得税10万円の場合)では、余りが出るのは残高の多い1〜2年目だけで、差額は13年間の合計で1万円程度にとどまります。ただし、所得税・住民税の少ない方(収入が低め・扶養が多いなど)や借入額の大きい方は、余る額が毎年数万円規模になることもあり、その場合は夫婦で分ける効果が大きくなります。ご自身の源泉徴収票の税額と控除対象額を比べて判断しましょう。 ただし、ペアローンは2本の契約になるため、事務手数料・印紙代・登記費用などの諸費用も2本分かかります。控除の増加分と諸費用の増加分を比べて判断しましょう。判断に迷う場合はFPなど専門家に試算してもらうのがおすすめです。ただし、夫婦で住宅ローン控除を受ける場合は今後の出産も考慮する
夫婦で住宅ローン控除を受ける場合に気をつけたいのが今後の出産です。出産があり、夫婦どちらかが産休、育休に入れば給料が減ります。給料が減るということは支払う所得税や住民税も減るので、住宅ローン控除で控除される金額も減ってしまいます。 今後出産の予定がないということでしたら気にすることはありません。しかし、これから2人、3人と出産をするという予定の場合は、育休に入った場合に受けられる住宅ローン控除の金額がいくらになるのかも計算して、夫婦で受けるのかどちらか一方で受けるのかを決めるといいでしょう。住宅ローンの借入額が多いほど住宅ローン控除の金額も多くなるが、利息はそれ以上に増える
住宅ローン控除で受けられる控除額は住宅ローンの年末残高の0.7%です。そのため、住宅ローンの年末残高が多いほど控除対象額は大きくなります。 では「控除目当てに多めに借りる」のは得なのでしょうか。借入額別に、13年間の控除合計と支払う利息を比較してみました。計算条件は先ほどと同じ(金利1.5%・35年・元利均等返済の試算例。控除は所得が十分にあり借入限度額の範囲内で満額使えると仮定)です。
| 借入額2,000万円 | 借入額2,500万円 | 借入額3,000万円 | |
|---|---|---|---|
| 13年間の控除合計(目安) | 約152万円 | 約190万円 | 約229万円 |
| 35年間で支払う利息 | 約572万円 | 約715万円 | 約858万円 |
住宅ローン控除が終わった後に繰上返済する方法
それでも「控除期間中は繰上返済をせず、控除が終わってからまとめて繰上返済する」という工夫には意味があります。控除期間中に繰上返済をすると年末残高が減って控除額も減ってしまうためです。繰上返済の効果(利息軽減)と控除の減少分を比べて、控除期間終了後に繰上返済するかどうかを判断しましょう。 私が考える賢い住宅ローンの組み方についてはこちらの記事もご覧ください。 本当に賢い住宅ローン返済方法は、繰上げしない、長く借りる、なぜ?住宅ローンの借入額を多くするメリットは住宅ローン控除以外にもある
住宅ローンの借入額をわざと増やして住宅ローン控除の金額を多くするメリットは、いまの金利水準では微妙なところです。しかし、住宅ローンの借入額を増やす(=頭金を入れすぎない)メリットは他にもあります。住宅ローンの借り主が死亡した場合の保障額が大きくなるので、万が一の時に手元に残るお金が多くなる
住宅ローンの借入額が大きくなるということは、それに対してかかっている団体信用生命保険の保障額も大きくなるということです。 頭金をたくさん使って住宅ローンの借入額を少なくした後、住宅ローンの借り主が亡くなってしまった場合、頭金として使ったお金は返ってきません。 しかし、頭金を抑えて手元にお金を残しておくと、住宅ローンの借り主が亡くなった場合は住宅ローン返済が無くなった上に手元のお金も残すことが出来ます。教育費や急な出費への備えにもなります。 そう考えると、必ずしも住宅ローンの借入額を減らすことが賢い選択とはいえません。「控除で得をするため」ではなく「手元資金を残すため」に借入額を考えるのが、いまの金利環境に合った考え方だと思います。借入限度額を超える借入は控除が増えない
なお、前述のとおり控除の対象になる残高には上限(借入限度額=住宅の性能や世帯区分により2,000万〜5,000万円)があります。マイホームの購入価格が高く、年末残高が限度額を超える場合、超えた部分には控除がつきません。「たくさん借りるほど控除も増える」わけではない点に注意してください。現金一括でマイホームを買える場合でも住宅ローンを利用したほうがお得になることがある
住宅ローンを使わなくても現金一括でマイホームを購入できるという方でも、住宅ローンの利用を検討する価値はあります。 理由は、住宅ローン控除を受けられること、そして団体信用生命保険という保障を得られることです。ただし、金利が控除率0.7%を上回っている現在は、支払う利息・手数料と控除額を比較して、本当に得になるかを個別に試算する必要があります。 なお、預金残高と同額までの住宅ローン利息がかからない「預金連動型住宅ローン」(例:東京スター銀行「スターワン住宅ローン」=一時新規受付を停止していましたが2025年1月に販売を再開しています)という商品もあります。取扱金融機関は限られ、手数料や条件もそれぞれ異なるため、利用を検討する場合は必ず各金融機関の公式サイトで最新の取扱状況をご確認ください。住宅ローン控除を受けるための手続き方法について
住宅ローン控除は住宅ローンを借りれば自動的に受けられるわけではなく、手続きが必要になります。その手続き方法についてお伝えしておきます。住宅ローン控除を受けるための必要書類
初年度の確定申告で必要になる主な書類です(2026年8月時点・国土交通省の案内で確認)。- 確定申告書・住宅借入金等特別控除額の計算明細書:税務署の様式(国税庁の確定申告書等作成コーナーでも作成できます)
- 住宅ローンの年末残高証明書:10月〜11月頃に借り入れした金融機関から送られてきます。無くさないように保管しておきましょう(金融機関によっては電子交付やデータ連携方式の場合もあります)
- 登記事項証明書:法務局へ行くか、ネットでも入手できます
- 工事請負契約書(売買契約書)の写し:取得対価がわかる書類です
- 省エネ性能等の証明書:新築の場合、長期優良住宅の認定通知書や住宅省エネルギー性能証明書・建設住宅性能評価書など、住宅の性能区分に応じた証明書が必要です(住宅会社・分譲事業者に確認しましょう)
- 中古住宅で1981年以前に建築された場合:耐震基準適合証明書・既存住宅性能評価書・既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書のいずれか(1982年=昭和57年以降の建築なら不要です)