住宅ローンの審査に通るかどうかは気になるポイントだが・・・
住宅ローンの審査に通った金額が、そのまま「無理なく返せる金額」とは限りません。審査は金融機関が「この額なら返済できそうか」を判断するもので、教育費や老後の貯金まで含めた家計のゆとりを保証するものではないからです。住宅ローンの契約はゴールではなく、あくまでもスタートです。
家を購入する際には、ほとんどの方が住宅ローンを利用します。この時点では「自分は住宅ローンの審査に通るのだろうか」ということが、どうしても気になります。
住宅ローンの審査に通らなければ家を買うことができないので、住宅ローンの審査に通るかどうかが大事な点であることは間違いありません。
住宅ローン審査に通るかどうかが問題ではない
住宅ローンの審査に通るかどうかは申し込んでみなければわかりません。
住宅ローンの審査には金融機関ごとに独自の基準があります。審査に通りやすくするために事前に準備をしなければいけないことは、それほどありません。
それよりも、その住宅ローンの審査に通って契約を結んだ後に、余裕をもって支払っていける返済計画になっているのかをしっかりと考えてください。借入金額・返済期間・住宅ローン以外の出費などなど、マイホーム生活を具体的に想定してみることが大切です。
住宅ローンの審査に通るということは、あなたの信頼性が認められたことに違いはありません。
ただしそれは、毎月住宅ローンを支払いながら、教育費や老後のための貯金ができて、普段の生活も無理なく送れることのお墨付きをもらったわけではありません。
あくまで銀行などの金融機関側が「この金額の住宅ローンぐらいはなんとか払えるのではないか」という判断をしているだけにすぎないということなのです。
例えば年収500万円の方が、フラット35で住宅ローンを申し込む場合を考えてみます。フラット35では「年収に占めるすべての借入れの年間合計返済額の割合(総返済負担率)」の基準が公表されており、年収400万円以上の方は35%以下です。年収500万円なら年間返済額の上限は175万円、月あたり約14万5,000円までという計算になります(【フラット35】ご利用条件)。
この毎月返済額を、2026年9月のフラット35の金利(返済期間21年以上35年以下・融資率9割以下・新機構団信付きの最も多い金利で年3.460%)・返済期間35年・元利均等返済で逆算すると、計算上はおよそ3,550万円まで借りられることになります。
「3,550万円も借りられるんだ」と思われるかもしれません。しかし、実際にそこまで借りていいのかどうかは、まったく別の問題です。
年収が500万円の場合、手取りの年収は約400万円ぐらいだと思います。これを12ヶ月で割ると、毎月の手取り収入は約33万円になります。3,550万円の住宅ローンを上記の条件で借りた場合、月々の返済額は約14万5,000円です。さらに固定資産税が仮に1ヶ月あたり1万円かかるとすると、毎月約15万5,000円が家のために消えていくことになります。
ということは、残った約17万5,000円で生活をして、お金を貯めて、さらに子どものためのお金も払ってということになりますね。これはなかなかきつい生活のような気がします。でも住宅ローンの審査は、基準の範囲内であれば通る可能性が十分あり、お金は貸してくれるということなのです。
この例を見てわかる通り、審査に通ればそれでよいというわけではありません。審査に通るかどうかだけではなく、あなた自身が実際に払っていける金額なのかどうか、という観点から住宅ローンの借入額を考えてみてください。
実際の審査では、自動車やバイクのローン、キャッシングの利用残高なども合わせて返済負担が計算されます。フラット35の場合、総返済負担率の「年間合計返済額」には自動車ローン・教育ローン・カードローンのほか、クレジットカードのキャッシングや分割払い・リボ払いも含まれます。
車が生活に欠かせない地方では、夫婦で2台分のマイカーローンを抱えているご家庭も珍しくありません。その分だけ住宅ローンに回せる枠は小さくなるので、申込前に残高と毎月の返済額を書き出しておきましょう。
FPからのワンポイント:手取りの20〜25%以内で考える
FPとしてご相談をお受けするときは、毎月の返済額を手取り月収の20〜25%以内に収めることを一つの目安としてお伝えしています。先ほどの年収500万円(手取り月約33万円)の例なら、毎月6万6,000円〜8万2,500円程度です。上限の8万2,500円で同じ条件(年3.460%・35年・元利均等)を逆算すると、借入額はおよそ2,000万円になります。
審査上の上限(約3,550万円)と、家計に無理のない金額(約2,000万円)には、1,500万円以上の差があります。
しかも日本銀行は2026年9月18日の金融政策決定会合で、政策金利を1.0%程度から1.25%程度へ引き上げました(日本銀行の公表文)。変動金利で借りる場合は、将来の金利上昇で返済額が増える可能性も織り込んで、余裕のある返済計画を立てておきましょう。
金利が上がると「借りられる額」そのものも小さくなります
もう一つ知っておいていただきたいのが、審査上の借入可能額は金利が上がるだけでも縮むということです。
同じ年収500万円・毎月約14万5,000円の上限でも、フラット35の最も多い金利が年3.290%だった2026年8月は計算上およそ3,630万円だったのに対し、年3.460%となった2026年9月はおよそ3,550万円と、ひと月で約80万円ぶん小さくなりました(いずれも住宅金融支援機構が公表する金利・返済期間35年・元利均等返済で試算)。
「借りられる額」を前提に物件の予算を組むと、金利が動くたびに計画がぶれてしまいます。払える額を軸に予算を決めておけば、金利が多少動いても計画は揺らぎません。金利上昇局面の今こそ、この順番を大切にしてください。
住宅ローン審査に通らない原因とは?
過去にクレジットカードの支払いで延滞がたくさんあるとか、債務整理をしたとか、自己破産をしたとか、そういった特別な事情がない限り、払っていけるだろうという金額に設定しておけば、借入額が多いという理由で審査に通らないということは、ほとんどないと思っていただいてよいかと思います。
ですから、審査に通るかではなく、払えるかどうかという視点で借入額を設定してください。年収別の借入額の目安は年収400万円で住宅ローンはいくら借りれる?審査と目安でも解説しています。返済計画に迷ったときは、金融機関の相談窓口や、私たちのようなFPへの相談も活用してみてください。
よくいただくご質問
Q. 夫婦の収入合算やペアローンなら、もっと借りても大丈夫ですか?
A. 収入合算やペアローンを使うと、審査上の借入可能額は確かに増えます。ただし「払える額」の視点で見ると、育児休業・転職・病気などでどちらかの収入が減った途端に苦しくなりやすい借り方でもあります。FPとしては、世帯の手取り収入に対して20〜25%以内という目安は合算の場合も変えず、できれば「どちらか一方の収入が一時的に減っても返済を続けられるか」まで確認しておくことをおすすめします。
Q. 「借りられる上限まで大丈夫ですよ」と勧められたときは?
A. 住宅会社や不動産会社は、審査基準から逆算した上限額をもとに物件を提案することがあります。悪意があるわけではなく、それが先方のお仕事だからです。だからこそ、予算の上限はご自身の家計から先に決めておくことが大切です。教育費や車の買い替え、老後資金まで含めた収支を書き出してみると、無理のない毎月返済額が見えてきます。ご自身で判断が難しければ、FPなど中立的な相談先も活用してみてください。
Q. 審査の前に転職すると、借りられる額は変わりますか?
A. 変わることがあります。勤続年数は審査で確認される項目の一つで、転職直後は収入の見込みを慎重に見られやすいためです。住宅購入と転職の時期が重なりそうなときは、転職後の住宅ローン審査で知っておきたい注意点も確認してから計画を立ててください。
※本記事の金利と試算は2026年9月時点の情報です。最新の適用金利や審査基準は住宅金融支援機構・各金融機関の公式サイトでご確認ください。