レーシックの手術歴があるというだけで、住宅ローンの審査に一律で落ちることはありません。関係してくるのはローンとセットで加入する団体信用生命保険(団信)の告知で、手術から3年以内なら告知が必要になり、査定の結果しだいでそのまま加入、条件付きの加入、加入できない、のいずれかに分かれます。団信に入れなかったときにも取れる道があるので、相談を受けるときと同じ順番でお話しします。
フラット35以外の住宅ローンは団体信用生命保険への加入が条件
銀行や信用金庫の住宅ローンは、団信への加入を融資の条件にしているところがほとんどです。徳島のように地銀・信金が身近な地域でも事情は同じで、フラット35を除けば、原則として団信に入れることが借入れの前提になっています。
団信も保険の一種なので、通常の生命保険と同じように加入時に健康状態の告知を求められます。収入や勤務先には問題がないのに、この告知の内容が原因で団信の契約ができず、結果として住宅ローンの審査が通らないという方もいらっしゃいます。
団信は死亡だけでなく高度障害状態も保障する
団信は、住宅ローンの借り主が亡くなったときに残りの返済を免除してくれる保険です。たとえばご主人の名義で借りていて、万一ご主人が亡くなった場合には、残っている住宅ローンを家族が返す必要はなくなります。
あまり知られていませんが、保障されるのは死亡だけではありません。3大疾病や8大疾病といった特約付きの団信に入らなくても、一般的な団信には高度障害状態になったときの保障も含まれています。
高度障害状態とはどんな状態か
民間の団信で死亡時以外に保障される高度障害状態は、次のような状態を指します。
| 高度障害状態 |
|---|
| 両眼の視力を全く永久に失ったもの |
| 言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの |
| 中枢神経系・精神または胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの |
| 両上肢とも手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの |
| 両下肢とも足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの |
| 1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったか、またはその用を全く永久に失ったもの |
| 1上肢の用を全く永久に失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったもの |
※生命保険文化センターHPより引用
亡くならなくても、それに近い重い状態になれば保険金が支払われ、住宅ローンの返済が免除されるということです。なお、フラット35の新機構団信は基準が異なり、身体障害者福祉法の1級または2級に該当して身体障害者手帳の交付を受けたときに保険金が支払われます(住宅金融支援機構「新機構団信の加入要件・保障内容」)。
レーシックが関係するのは団信の告知書の「過去3年以内」の項目
では、団信に加入するときの健康状態の告知を見てみます。告知日や氏名などの欄は省き、健康状態の質問だけを抜き出しました。告知書の様式や質問の文言は引受保険会社によって多少違うので、以下は代表的な告知書の例として読んでください。
- 最近3ヶ月以内に医師の診察・投薬・治療・指示(要経過観察を含む)・指導を受けたことがありますか?
- 過去3年以内に下記の病気で、手術を受けたことまたは2週間以上に渡り医師の治療・投薬を受けたことがありますか?
- 狭心症、心筋梗塞、心臓弁膜症、先天性心臓病、心筋症、高血圧症
- 脳卒中(脳出血・脳梗塞、くも膜下出血)、脳動脈硬化症
- 精神病、ノイローゼ、てんかん、自律神経失調症、アルコール中毒
- ぜんそく、慢性気管支炎、肺結核
- 胃潰瘍、十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、すい臓炎
- 肝炎、肝硬変、肝機能障害
- 腎炎、ネフローゼ、腎不全
- 緑内障、網膜の病気、角膜の病気
- ガン、血腫、白血病、腫瘍、ポリープ
- 糖尿病、リウマチ、膠原病、貧血症、紫斑病
- 子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫、乳腺症
- 手・足の欠損または機能の障害はありますか?または、背骨(脊柱)・視力・聴力・言語・そしゃく機能に障害がありますか?
この3つが団信の代表的な告知項目です。文面だけでは判断しにくいと思うので、順に中身をかみくだいていきます。
告知項目1は直近3ヶ月以内の受診・指導
1つ目は、告知日(団信の告知書を書く日)からさかのぼって3ヶ月以内に、病院で診察や治療を受けたか、健康診断で再検査などの指示や指導を受けたかを聞く項目です。
当てはまる場合は、いつ、どんな病気やケガで、どれくらい通院(入院)したか、手術の有無、いまの状態(完治か治療中か)を記入します。3ヶ月以内に病院へ行ったかどうかを思い出せばよいので、比較的わかりやすい項目だと思います。
告知項目2は過去3年以内の手術と2週間以上の治療
2つ目は、一覧に挙がっている病気で、告知日から3年以内に手術を受けたか、2週間以上の治療・投薬を受けたかを聞く項目です。手術は受けたかどうかで答えられますが、2週間以上の治療は思い違いが起きやすいところです。
2週間以上の治療には薬の処方期間も含まれる
2週間以上の治療とは、2週間以上入院したことや14回以上通院したことに限りません。1回の受診で2週間分の薬を出してもらった場合も該当し、途中で飲むのをやめていても当てはまります。
週1回の通院を2週間続けたケースも同じで、実際に病院へ行ったのは2回でも該当します。実際のところ、ここを書き漏らす方が多いので、お薬手帳や診察券を見ながら記入すると漏れを防げます。
高血圧・糖尿病・眼の疾患は数値の記入も求められる
高血圧、糖尿病、眼の疾患を告知する場合は、それぞれ次の情報もあわせて記入します。
- 高血圧は、最近2〜3回の服薬中の血圧(最高と最低)
- 糖尿病は、HbA1cと空腹時血糖
- 眼の疾患は、両目の現在の視力
告知項目3は手足の欠損や視力・聴力などの障害
3つ目は文字どおり、手足を含めて一覧の部位に欠損や障害があるかどうかの質問です。当てはまる場合は、どんな障害かを追加で告知します。この項目は時期を問わないので、3年たっても告知が必要になる点が告知項目2との違いです。
レーシックは告知項目2の「角膜の病気」の手術にあたる
レーシックは角膜をレーザーで削って屈折を矯正し、視力を回復させる手術です。そのため、告知日から3年以内にレーシック手術を受けていれば、告知項目2の「角膜の病気(の手術)」として告知が必要になります。
反対に、手術から3年以上たち、直近3ヶ月以内に眼科の受診もなく、視力の障害も残っていなければ、代表的な告知書では該当しないのが一般的です。様式は保険会社ごとに違うので、迷ったら自己判断で省かず、金融機関や保険会社に聞いてから記入してください。
3年以内の手術歴があっても加入できるケースはある
告知が必要だからといって、団信に入れず住宅ローンも借りられないと決まるわけではありません。そのまま加入できるケースもあれば、目の病気が原因の死亡や高度障害は保障しないという条件(部位不担保など)が付くケース、加入できないケースもあります。結果は保険会社の査定しだいで、出してみるまでわかりません。
レーシックが団信の査定に影響するのは失明が高度障害にあたるから
レーシックが団信の告知や加入に影響するのは、合併症などで視力に重い障害が残るおそれをゼロにはできないからです。失明は、先ほどの高度障害状態のうち「両眼の視力を全く永久に失ったもの」に該当します。
手術のあとに団信へ加入し、その後に手術の影響で失明すると、保険会社は住宅ローンの残高分を銀行に支払うことになります。保険会社から見れば支払いの可能性が通常より高くなるため、手術歴がある方には条件が付いたり、加入を断ったりする場合があるわけです。
団信に加入できないときに住宅ローンを借りる3つの方法
レーシックに限らず、病気やケガが原因で団信に入れず、審査も通らなかったときの対策は3つあります。あわせて、昔からよく話題にのぼる告知義務違反がなぜ絶対にいけないのかもお伝えします。
方法1 告知が必要なくなるまで待つ
1つ目は、告知の対象から外れるまで待つ方法です。告知書には過去3年以内の手術や治療を聞く項目があるので、治療の終了から3年間該当する受診がなければ、その項目は告知しなくてよくなります(直近3ヶ月以内の診察・投薬もないことが前提です)。
手足の欠損や視力・聴力・言語・そしゃくの障害がある場合は、時期にかかわらず告知が必要です。そうした障害に当てはまらない病気やケガであれば、3年待つことで告知が不要になり、団信に入れる可能性が出てきます。家づくりを急がない方には、いちばん負担の少ない方法と考えています。
方法2 ワイド団信を扱う住宅ローンを選ぶ
2つ目は、通常の団信よりも引受基準がゆるやかな「ワイド団信」に加入する方法です。テレビCMで見かける持病があっても入りやすい保険の、団信版と考えるとイメージしやすいと思います。
そのかわり、取り扱う金融機関が限られることと、住宅ローン金利に上乗せが必要になることが負担になります。上乗せは年0.3%の銀行が多く、ネット銀行3行の条件を並べると次のようになります(2026年10月時点・各行の公式案内による)。
ワイド団信を扱う金融機関の例
| 金融機関 | ワイド団信の上乗せ金利 | 備考 |
|---|---|---|
| ドコモSMTBネット銀行 | 年0.3% | 先進医療特約・3大疾病保障特約・全疾病保障は付帯しない |
| auじぶん銀行 | 年0.3% | 51歳以上は一般団信とワイド団信から選ぶ |
| ソニー銀行 | 年0.2% | 完済時の年齢は満81歳未満 |
ドコモSMTBネット銀行(旧・住信SBIネット銀行)の住宅ローンは、WEB申込コースの仮審査申込の受付が2026年10月30日(金)17時で終了する予定です。それ以降に申し込む方は、SBIマネープラザなどの銀行代理業者が窓口になる対面相談コースを使います。対面相談コースも同じスゴ団信の仕組みで、健康状態によってはワイド団信での査定結果が出る場合があります。
また、団信は保険会社の商品なので、A銀行とB銀行で引受保険会社が違うこともよくあります。A銀行の団信に通らなくても、B銀行の団信には加入できる可能性があるので、1社で断られたからといって一般団信をあきらめる必要はありません。団信の保障内容も銀行ごとに違うため、引受保険会社まで含めて比べてみてください。
方法3 団信が任意のフラット35を借りる
3つ目は、団信に入らなくても借りられる住宅ローンを選ぶ方法です。フラット35は団信への加入が任意なので、団信なしでも借入れができ、その場合は新機構団信付きの借入金利から年0.2%引き下げた金利になります(住宅金融支援機構「新機構団体信用生命保険制度」)。
ただし団信の保障がないので、万一のときに住宅ローンが家族に残らないよう、生命保険などで自分で備える必要があります。いま入っている保険で残された家族が返済を続けられるか、車の維持費など地方ならではの固定費も含めて家計を見直しておくと安心です。
フラット35は、地元の地銀・信金のほか、SBIアルヒのような住宅ローン専門会社やネット銀行など多くの金融機関が取り扱っています。同じフラット35でも金利や事務手数料は取扱機関ごとに違うので、複数の窓口で見積もりを取って比べることをおすすめしています。
方法4とされがちな告知義務違反は絶対に避ける
昔から、借入額が一定以下なら告知書しか見られないので、病気を書かずに団信へ入ればよいという話を耳にすることがあります。これは告知義務違反で、FPとして勧めることはできません。
健康診断書の提出が必要になる基準は金融機関や引受保険会社によって違い、たとえばフラット35の新3大疾病付機構団信では、借入額が5,000万円を超えると告知事項の有無にかかわらず健康診断結果証明書の提出が求められます(住宅金融支援機構「ご加入の手続・ご注意点」)。何より、違反したまま加入すると、いざというときに保険金が支払われず、家族に住宅ローンだけが残るおそれがあります。
告知義務違反が見つかると契約解除や保険金の不払いにつながる
保障が始まってから2年以内に告知義務違反がわかった場合、団信の契約は解除され、保障そのものがなくなります。
2年が過ぎれば安心というわけでもありません。2年経過後は原則として解除できなくなりますが、2年以内に保険金の支払事由が起きていればその後に発覚しても解除されることがあり、悪質な場合は詐欺による取消しとして2年を過ぎても保険金が支払われないことがあります。時効のように考えるのは危険です。
解除されなくても違反と因果関係のある病気は保障されない
契約が解除されないからといって、どんな場合でも保障されるわけでもありません。告知義務違反の内容と因果関係がある病気やケガで亡くなったり高度障害になったりした場合には、保険金は受け取れません。
たとえば高血圧を隠して加入し、高血圧と関係の深い脳梗塞などで亡くなった場合には、保険金が支払われないことが多くなります。そうなれば、住宅ローンの返済義務はそのまま家族に残ります。
違反と関係のない事故などは保障の対象になる
反対に、違反と因果関係のない死亡や高度障害には保険金が支払われます。がんを隠して加入した方が交通事故で亡くなり、死因ががんと無関係と判断されたような場合です。ただ、これは結果論にすぎず、違反を選ぶ理由にはなりません。
告知義務違反は医師の記録と保険会社の調査でわかる
医師の診断書から判明するケース
告知が必要な病気を隠して加入したあと、別の理由で病院にかかると、医師から既往歴を聞かれます。きちんと治療を受けるには正直に答えるしかなく、医師は診断書やカルテにその既往歴を書き残します。
その方が亡くなって保険金の請求があると、保険会社は診断書などを確認し、過去の病気や通院歴を加入時の告知書と照らし合わせます。そこで食い違いが見つかれば、保険金の支払いは断られます。
早期の請求で調査が入るケース
加入から半年で亡くなった場合など、比較的早い時期に保険金の請求があると、保険会社が医療機関に照会して診断書やカルテを調べることがあります。違反がなければ保険金はきちんと支払われますが、この調査で違反が見つかる例は実際にあります。
数千万円の保障が1つの嘘で失われれば、家族がマイホームを手放すことにもなりかねません。ありのままを告知したうえで、ここまでの3つの方法から道を探すのが、遠回りに見えて確実な進め方だと考えています。
団信が理由で審査に落ちると次の申込みにも記録が残る
住宅ローンの審査では、金融機関が個人信用情報を照会します。個人信用情報はクレジットカードやローンの利用歴のことで、借りたお金をきちんと返す人かどうかを判断する材料になります。
審査の申込みをすると、その事実も信用情報に一定期間記録されます。期間は信用情報機関によって違いますが、おおむね半年程度は、ほかの銀行からも別の銀行に住宅ローンを申し込んだことがわかる状態になります。
すると、なぜ少し前に申し込んだ銀行で借りていないのかと見られることがあります。理由を聞いてもらえればよいのですが、何か事情があると受け取られれば、説明の機会もないまま審査が通らない可能性もあります。借りられる額と無理なく返せる額の考え方は「住宅ローン審査に通ればOK?借りられる額と払える額は別物」でも詳しくお話ししています。
とはいえ、告知に該当するから一律に加入できないわけではなく、結果は出してみるまでわかりません。結果が出ないうちに次の審査へ悪い影響が出るのは避けたい、という方に検討していただきたい方法があります。
団信の前に収入保障保険の査定を受けてみる方法もある
一般に、生命保険会社の保険の告知は団信の告知よりも細かく、査定も厳しめです。そちらで問題なく引き受けてもらえるなら、団信にも加入できる可能性が高いと考えられます。
この場合も保険会社に告知の記録が残るので、収入保障保険への加入を本気で考えているなら、本命の保険会社は外して申し込んでください。健康状態の審査基準は保険会社ごとに違うものの、大きくかけ離れることは少ないので、本命以外で試すのが無難です。
必要のない保険に申し込むのは気が引けるかもしれませんが、査定結果を確認するだけで、保険料を払って契約を成立させる義務はありません。そのかわり、団信の可否を確かめるための申込みであることは、保険代理店の担当者に先に伝えておくのが礼儀です。
まとめ 健康状態で審査が通らなくても打つ手はある
収入や勤務先に問題がないのに、健康状態が理由で住宅ローンの審査に通らないとなると、ショックは大きいと思います。それでも、告知が不要になるまで待つ、ワイド団信を使う、フラット35を団信なしで借りて生命保険で備える、という正攻法の対策が残っています。
告知義務違反だけは、いざというときに家族を守れなくなるので避けてください。年齢によって団信の選択肢が変わる点は「50歳・55歳で住宅ローンは組める?借入額と団信をFP解説」でもまとめています。実際に選ぶ段階では、各金融機関の最新の条件をご自身でも確かめてから判断してください。