転職サービス「doda」を運営するパーソルキャリアの調査によると、2025年に転職した人の平均年齢は32.9歳で、3年連続で上昇しています(2026年4月公表)。

また、国土交通省が行った令和6年度住宅市場動向調査によると、新築の注文住宅や分譲戸建て住宅、分譲マンションなど、いわゆる「マイホーム」を初めて取得した世帯主の年齢は30歳代が最多だったという統計が出ています。

つまり、「転職する時期」と「マイホームの購入時期」が重なる人がたくさんいることがわかります。また、住宅ローンの審査においては、転職は基本的には不利とされていますので、転職後に住宅ローンを組もうとした時に思わぬ壁に突き当たってしまうことがあります。

この記事では、マイホームを購入したいと思ったが転職したばかりで住宅ローンの審査に不安を感じていたり、住宅ローンの審査に落ちた人向けの住宅ローンの審査の注意点や転職直後でも比較的利用しやすいと考えられる住宅ローンの解説を行いたいと思います。

審査の注意点「勤続年数」「転職理由」「返済シミュレーション」

まず、住宅ローンの主な審査項目を踏まえた上で、転職後にローンを組む時に特に注意しておきたい点を3つ紹介します。

注意点1.勤続年数で引っかかる可能性がある

転職後すぐに住宅ローンを申し込んだ場合、本当に転職したばかりであれば勤続年数は当然1年未満と言うことになります。

個人事業主・自営業・起業の場合は・・・

大手の会社に転職した場合であればまだ良いですが、転職して稼業を継いだり、個人事業主・自営業になった人は1年未満での住宅ローンの借り入れはかなり難しくなります。2年未満だと普通の銀行の住宅ローンはほとんど利用できないためです(そもそも丸3年以上の事業実績を求められたり、過去3年分の決算書や確定申告書の提出を求められたりする住宅ローンが多いためです)。

そのような人は、下手に民間の金融機関の住宅ローンを無理に探すのではなく「フラット35」の利用を検討するのが最短ルートです。フラット35は職業や勤続年数による申込要件を設けていません(住宅金融支援機構公式)。利用できる物件の性能条件がありますが、最近の住宅であればまず基準を満たしますし、中古住宅も条件を満たすものが増えています。所得の確認も、原則として前年1年分の収入(確定申告書等)で審査されます(金融機関により追加書類を求められる場合があります)。

(実際の収入が不安定かどうかは別にして)収入が不安定と判断されやすい、「個人事業主・自営業・新しい会社の設立」という条件に合致してしまう人は、とにかくフラット35の審査に申し込んでおくことをおすすめします。もちろん、同時にお気に入りの銀行の住宅ローンに申し込んでも良いですが、残念ながら審査に落ちる可能性は十分ありますのでセーフティネットの役割としてもフラット35への申し込みは効果的です。また、フラット35は手数料と金利が安い金融機関を選ぶこと、また、融資実績が多く様々な事情を抱える人に貸してきた経験が豊富な金融機関を選ぶことが重要です。

そういった観点でおすすめしたいフラット35の申込先は以下の2社かなと思います。

ネット銀行大手・ドコモの銀行(旧・住信SBIネット銀行)のフラット35

16年連続フラット35実行件数日本一のSBIアルヒ

サラリーマンに関しては、自営業者のように「事業継続年数が3年以上」という明確な基準は設けられていない場合が多いのですが、さすがに勤続年数が1年未満となると安定性に欠けるとみなされる可能性大です。

たとえ転職前と同じくらいの収入があったとしても、勤続年数がネックになって審査に影響を及ぼす可能性が高いことを頭に入れておきましょう。

注意点2.転職の理由が適正か否か

勤続年数が短いと住宅ローンに通りにくいと説明しましたが、実は勤続年数を審査項目に入れていない金融機関もあります。

たとえば「フラット35」はその最たる例で、たとえ勤続年数が1年未満であっても住宅ローンを申し込むことが可能となっています。

他にも、近年人気のネット専業銀行は勤続年数に制限を設けていないか、あるいは数ヶ月と短い期間を設定しているものが多く、転職した直後でも不利になることはありません。

銀行の中では、たとえばSBI新生銀行も申込条件に勤続年数を掲げていません(正社員・契約社員は前年度税込年収300万円以上などの条件。2026年7月時点)。SBI新生銀行は原則、事前審査(仮審査)がなく本審査のみで手続きが完結するうえ、保証料や一部繰上返済手数料が0円と諸費用面がわかりやすいので、転職後で何かと落ち着かない時期でも検討しやすい選択肢の一つです。最新の条件は公式サイトでご確認ください。

ただ、その場合は収入証明書のかわりにこれまでの職歴が記載された職歴書や、勤務先が発行した収入金額記載の書類(雇用契約書や年収見込み証明書など)の提出を求められることがあります。

金融機関はこれらの書類を判断材料にして、転職が適正なものであったかどうかを審査するのです。

たとえば同業界で年収が増えていたり、元会社からの要請でグループ会社に転職したといったケースの場合は「キャリアアップ転職」とみなされるため、たとえ勤続年数が短くても審査の上で不利になることはあまりありません。

一方、異業種間で何度も転職を繰り返しているような場合や、同業界で年収がダウンしている場合はキャリアアップとはみなされないため、審査に影響を及ぼす可能性が高くなります。

また、会社を一度退職してから転職活動をした方は、金融機関によって転職時のブランク期間(無職の期間)が複数カ月ないことなどもルールが定められているので注意が必要です。

転職の理由は人それぞれですが、その内容によっては審査の面で有利または不利になる場合があることを覚えておきましょう。

注意点3.返済シミュレーションは念入りに

住宅ローンを利用する際は、月々どのくらいであれば無理なく返済できるのかをシミュレーションする必要があります。

月々の返済額はマイホームの価格と自分の年収を照らし合わせて計算するのが一般的ですが、転職直後は特にシビアに返済額を算出しなければなりません。
というのも、転職したばかりの頃は待遇面や職場環境を正しく把握することができず、将来の展望がはっきり見通せない状態がしばらく続くからです。

もちろん転職する際に提示される条件はありますが、実は会社の業績が思わしくなくて1年も経たないうちに給与がカットされたり、職場の人間関係に悩んで退職したいと考えるようになるなど、思わぬアクシデントが発生する可能性も否定できません。

特に前者は深刻で、最初に提示された条件をもとにぎりぎりの状態で返済額を算出してしまうと、待遇が変動した時に四苦八苦してしまうおそれがあります。

長年勤めた会社であればある程度内情もわかっていてリスク回避することができますが、転職して間もない頃は会社の実状を把握するのは非常に困難でしょう。

そのため、もし転職後に住宅ローンを組むのであれば、予想外のハプニングが起こっても何とか対処できるほどの貯金や準備をしておくのは必須です。

また、返済シミュレーションについてもかなり余裕を持った金額を設定しておいた方が無難と言えます。

加えて、2026年7月時点では、日銀の利上げ(政策金利は2026年6月に1.0%程度へ引き上げ)を受けて住宅ローン金利は全体として上昇局面にあります。特に変動金利型は今後の見直しで返済額が増える可能性がありますので、転職直後の方はなおさら、金利が多少上がっても家計が耐えられる余裕を持たせた返済計画にしておきましょう(最新の金利動向は日本銀行・各金融機関の公式サイトでご確認ください)。

住宅ローンの審査項目は5つ!

住宅ローンの審査項目について見ていきましょう。

ご存じの通り、住宅ローンを組むには金融機関から所定の審査を受けて見事パスする必要があります。
これはクレジットカードや消費者金融などでも同じことですが、住宅ローンの場合は融資金額が非常に大きいため、クレジットカードなどに比べると審査がかなり厳しい傾向にあります。

審査内容や水準は金融機関によって異なりますが、主要な審査項目は以下5つが挙げられます。

収入

貸したお金は当然返してもらわなければなりませんので、ローンの申込者に十分な返済能力があるかどうかは真っ先にチェックされます。

収入が多ければ多いほど審査に通りやすくなりますが、一般的には融資金額とのバランスを考慮して融資可能か否かを判断します。

勤務形態

住宅ローンは長期に渡って返済されるものなので、安定した勤務形態であるかどうかも重要視されます。

最もローンに通りやすいのは正社員や公務員で、長期的に安定した収入を得られる立場とみなされます。一方、派遣社員や契約社員の場合、雇用形態が不安定なので審査の上でやや不利になると言えるでしょう。

自営業者などの場合は事業継続年数が3年以上経過していることを条件に掲げるところが大半を占めています。

勤続年数

勤務形態の項目でも説明しましたが、金融機関は住宅ローンの審査において、何よりも安定性を重視します。

同じ会社に長年勤めている場合、今後も安定して勤務し、収入を得ることが予測されますので審査の上で有利になるでしょう。

一方、勤続年数が短いと会社での立場もまだまだ不安定なままとみなされ、審査基準が厳しくなる可能性があります。

特に何度も転職を繰り返している場合は地に足がついていないとみなされたり、転職のブランク期間が複数カ月にわたっているなどの場合はたとえ十分な年収があったとしても審査に落とされることがあるので要注意です。

勤務先

大企業に勤めていれば安定性や収入面はお墨付きですが、実際は会社の規模だけで住宅ローンの審査の可否が決まることはありません。中小企業であっても所定の条件を満たしていれば審査にパスすることができます。

ただ、勤務先の経営状況が著しく悪化しているとみなされた場合は、審査に通らなくなる可能性があります。

過去の借入状況

住宅ローンの審査では必ず過去の借入状況がチェックされます。

借入したことがない、あるいは滞りなく完済している場合は問題ありませんが、一度でも遅延や延滞などの返済事故が発生していた場合、ローンの審査はぐっと厳しくなります。

延滞などの情報は、信用情報機関(CICなど)に契約期間中および契約終了後5年以内のあいだ保存されます。この期間に返済事故の記録があると審査の大きなネックとなるので要注意です。

転職後の住宅ローンでよくいただくご質問

FPとして、転職とマイホームの時期が重なった方からよくいただくご質問にお答えします。

転職してどれくらい経てば申し込みやすくなりますか?

一般的な銀行では勤続1〜3年以上を目安とするところが多い一方、本文で紹介したとおり、フラット35のように勤続年数の要件がないローンや、勤続年数を問わないネット銀行・SBI新生銀行のような銀行もあります。キャリアアップ転職で収入が上がっているなら、転職後数ヶ月でも前向きに審査してもらえるケースがあります。あきらめる前に、条件の合う金融機関を探してみましょう。

住宅ローンは転職前と転職後、どちらで組むべきですか?

審査の面だけで言えば、勤続年数の実績がある転職前に組んでしまう方が有利です。ただし、審査から融資実行までの間に転職した場合は金融機関への申告が必要で、黙って転職すると契約違反になるおそれがあります。転職の予定が具体的にあるなら、正直にスケジュールを伝えたうえでどちらのタイミングが良いか相談するのが安全です。

試用期間中でも申し込めますか?

金融機関によりますが、試用期間中は「本採用が確定していない」とみなされ、審査を見送られることが少なくありません。雇用契約書や年収見込み証明書で条件を示せる場合もありますので、まずは申込先の金融機関に確認してみてください。試用期間(多くは3〜6ヶ月)が明けてから申し込むのも一つの手です。

転職後に住宅ローンを組むなら準備と覚悟が必要

転職後に住宅ローンを組むのは不可能ではありませんが、決してたやすいことではありません。勤続年数の問題で審査に通りにくかったり、先々のことが見通せず、適切な返済額を算出できないなど、いろいろな面で不利なことが出てくるでしょう。

ただ、最近は勤続年数が1年未満でもローンの申込みを受け付けてくれるところも増えてきました。転職が前向きなものであればあるほど審査の面でも優遇されますので、転職してすぐだからという理由だけで住宅ローンをあきらめる必要はないでしょう。

一番良いのは転職前に住宅ローンを組んでしまうということですが、転職後でなければならない場合にはしっかりと計画性をもって動くことが重要となります。

もちろん将来の展望をつかみにくいという点は変わりありませんので、余裕を持った返済シミュレーションを行うなど、万一に備えた準備を怠らないことが大切です。