今の住宅ローンの残債を新しいローンに組み込んで建て替えることは、残債と解体費・建築費をまとめて借りられる建て替えローンを使えば可能です。ただ、借入額が膨らむぶん審査は通常より厳しくなりやすく、毎月の返済額も上がりやすいので、保険などの固定費とあわせて資金計画を組み直すことが前提になります。
ここでは、当サイトにお問合せいただいたお悩みを、個人を特定できないように加工・修正したうえで紹介します。
今回いただいたお悩みは以下のとおりです。
我が家は夫38歳、妻43歳、子供小6、小2、年少の5人家族です。
夫は会社員で額面の年収で700万円程度です。妻は保育士で第1子出産を機に退職し、現在求職中とのことです。
14年前に中古住宅を25年ローンで購入していて、ひと月の返済は約83,000円(ボーナス返済なし)でコツコツと返済してきたので、残りの住宅ローンの残債は900万円弱まで減っています。
購入時に内外装の手直しをして住んできましたが、今回、諸事情によりマイホームの建て替えを行いたいと思っています。
先日、内覧会に行ってきたのですが、そのハウスメーカーで「今の家の住宅ローンの残債を組み込んだうえで、新しい住宅ローンを組むことは可能だ」といわれましたが、我が家のような状況でハウスメーカーの言うような住宅ローンの借り換えはできるのでしょうか?
また、建て替えを検討するにあたり、家計の収支について夫婦で話し合っているのですが、加入中の保険に対する意識や認識が異なっていて、なかなか話し合いが進みません。
保険は夫とこどもの学資保険が日本生命で、妻は県民共済です。
夫は終身保険(重点保障プラン)月額17,445円。
同じ保障を継続する場合あと5年で保険料が上がります。
学資保険は10,950円、13,127円、14,397円ずつ掛けています。(加入時の年齢や満期の年齢が異なるので掛け金が違います)
妻の県民共済は月6,000円です。これは家計に対して適正な額と言えるのでしょうか?
夫は「生命保険は万が一の時のためのものだから、安易に保険料を安くしたら保障内容が薄くなるのではないか?」
「合併や破たんなどがあるから、最大手の日本生命が安心だ」と言います。
保険の見直しは抵抗があるようです。
日本生命は夫の父親からの長い付き合いがあります。妻は必要な保障が何なのか、今かけている保険は適正なのかが知りたいです。それを知った上で見直したほうがよければそうしたいと思うのですが、妻自身も保険に対しての知識が豊富なわけでもなく、話し合いは平行線です。
保険を見直して、住宅取得にゆとりが出る可能性はありますか?
中川様の記事にもあるように、住宅ローンでカツカツになることは避けたいですし、かといって予算を低く見積もってしまいローコスト住宅しか選択肢がなくなってしまうのも考え物です。
できれば今の返済額とさほど差がない金額で住宅ローンが組めたら、と思っていますが可能でしょうか?
もし、ライフプラン表を作成して、チェック表も実践した上で、我が家の現状では、建て替えは無謀だということになればその時はあきらめようと思います。
長くなりましたが、どうぞよろしくお願いします。
FPからの回答① 残債を組み込んだ建て替えは可能、ただし審査は厳しめ
今の住宅ローンの残債を組み込んで建て替えることは、不可能ではありません。既存の住宅ローンの残債と、解体費用・新しい建物の建築費用を一本化して借りられる建て替えローンを扱う金融機関があり、ハウスメーカーの担当者が言っていたのは、この仕組みのことだと思われます。
残債を上乗せするぶん借入額が大きくなるため、審査は通常の住宅ローンより厳しくなりがちです。年収に対する返済の割合、完済時の年齢、土地と建物の担保評価などを総合的に見られるので、まずは金融機関の事前審査で、いくらまで借りられるかを確認してください。
建物の状態によっては、建て替えではなく大規模なリフォームで希望がかなう場合もあります。たとえばSBI新生銀行では、一定の条件を満たせば、他の金融機関からの借り換えとあわせて、その物件のリフォーム資金も借り入れられます(2026年10月時点)。単体のリフォームローンより住宅ローンに近い条件で借りられる可能性がある点が利点です。
なお、新しい家の金額を残債の900万円ぶん水増しして借りればよい、という話を耳にすることがありますが、これは絶対にやめてください。金融機関への虚偽申告にあたり、発覚すれば一括返済を求められるおそれもある契約違反です。残債があることは正直に伝えましょう。残債を組み込める正規の商品があるので、隠す必要はありません。
今の返済額とどれくらい差が出るか、仮の数字で計算してみる
今の返済額とさほど差がない金額で組めるか、というご質問には、数字で答えるのがいちばんです。たとえば残債900万円に、解体費と建築費の2,400万円を足して3,300万円を借りると仮定します。金利は仮に年1.5%の全期間一定、元利均等・ボーナス返済なしで計算しました。
| 返済期間 | 毎月の返済額(3,300万円・年1.5%と仮定) | 今の返済額との差 |
|---|---|---|
| 35年 | 約101,000円 | 約18,000円増 |
| 30年 | 約113,900円 | 約30,900円増 |
今の返済は月約83,000円ですから、35年で組んでも毎月1.8万円ほど増える計算です。ご主人は38歳なので、35年返済なら完済は73歳前後になります。実際の金利は審査の結果や金利タイプで変わるため、事前審査で金利が示されたら、その金利で計算し直すと正確な差が分かります。
この差を何で埋めるかが、次の保険の話につながります。いまの保険料は、ご主人の終身保険と奥さまの共済だけで月23,445円です。これを掛け捨ての保障中心に組み替えて月8,000円ほどに収められれば、月15,000円ほどが浮き、返済の増加分の大半をまかなえます。
FPからの回答② 保険の見直しで、家計にゆとりが出る可能性は十分あります
保険では、ご主人の終身保険(重点保障プラン・月額17,445円)を最優先で見直す価値があります。あと5年で保険料が上がる更新型とのことですから、なおさらです。奥さまの県民共済も、保障内容を確認したうえで減らすことを検討してよいでしょう。
住宅ローンを組むと、ほとんどの場合は団体信用生命保険(団信)にも加入します。契約者に万が一のことがあれば住宅ローンの残りは保険で完済されるため、残された家族に住居費の負担はほぼ残りません。住宅ローンを組んだ後は、大きな死亡保障と役割が重なりやすいのです。
保障の考え方としては、掛け捨ての定期タイプのがん・医療保障と、都道府県民共済の医療タイプを組み合わせる程度で足りるケースが多いと感じます。ただし、解約は必ず新しい保障への加入、または団信の保障開始を確認してからにしてください。先に解約して無保険の期間を作るのが、見直しでいちばん危険な失敗です。
学資保険は、一番上のお子さん(小6)の分は進学まで期間が短いのでそのまま続けてよさそうです。二人目・三人目の分はまだ期間があるので、より利回りが期待できる方法への預け替えも候補になります。投資信託など元本が変動する商品を使う場合は、使う時期が近づいたら元本確保型へ移していくといったリスク管理が前提です。
保険を見直せば家計にゆとりが出る可能性は高く、新しく建てる家の金額しだいですが、家計の負担を大きく変えずに建て替えられる見込みがあります。
残債がある家の建て替え・住み替えで使えるローン
ご相談のケースに限らず、ローンが残っている家をどうにかしたいときに使われる主な方法は、次の3つです。
| 方法 | 仕組み | 向いているケース |
|---|---|---|
| 建て替えローン | 既存ローンの残債+解体費・建築費を一本化して新規借入 | 同じ土地で建て替えたい(今回のご相談のケース) |
| 住み替え(買い替え)ローン | 自宅の売却代金で返しきれない残債+新居の購入資金を一本化 | 別の場所の物件へ住み替えたい |
| 借り換え+リフォーム資金 | 他行ローンへの借り換えとあわせてリフォーム資金を組み入れ | 建て替えまでせず、大規模リフォームで済む |
いずれも借入額が膨らみやすい方法なので、借りられる額ではなく、無理なく返せる額を基準に資金計画を立ててください。取扱いの有無や金利・条件は金融機関ごとに異なります。
建て替えでは、解体費用は建て替え費用の一部としてローンに組み込める金融機関が多い一方、工事中の仮住まいの家賃や引っ越し費用まで入るかは商品しだいです。建物の完成前に払う着工金・中間金には、別途利息や手数料がかかるつなぎ融資を使うのが一般的です。
奥さまは現在求職中とのことなので、収入合算やペアローンは、合算する方に安定した収入があることが前提のため当面は難しいでしょう。まずはご主人おひとりの収入で事前審査を受け、再就職して収入が安定してから繰上返済で余裕を持たせる、という順番が現実的です。
建て替えた家も住宅ローン控除の対象、ただし旧ローンの残債分は除く
住宅ローン控除は令和8年度税制改正で5年延長され、2026年1月1日から2030年12月31日までに入居した場合に使えます(国土交通省「住宅ローン減税」)。建て替えた家は新築住宅として扱われ、2024年以降に建築確認を受ける場合は省エネ基準に適合していることが条件です。
2028年以降に入居する新築住宅は、土砂災害特別警戒区域などの災害レッドゾーンにあると控除の対象外になりますが、建て替えはこの除外の対象になっていません。一方で、新しいローンに組み込んだ旧ローンの残債部分は新しい家を建てるための借入ではないため、控除の対象外と考えておく必要があります。
借入金のどの部分が対象になるかには細かな判定があり、確定申告の前に税務署や国税庁のタックスアンサーで確認できます。教育費のピークと重ねた資金計画は、年収450万円・頭金500万円で3,200万円の住宅ローンはキツイかを検証した記事も参考になります。
あきらめる前に、数字で判断する
残債900万円弱まで、月8.3万円の返済を14年間続けてこられたのは、それ自体が立派な実績です。事前審査で借入可能額を確認し、保険を見直して毎月のゆとりを作り、ライフプラン表で教育費のピークと重ねても無理がないかを見る。この順番で進めれば、建て替えられるかどうかを数字で判断できます。
どんな状況でも、最初からあきらめる必要はありません。何年後にどの金額で建て替えるのかを家族で決めてしまえば、保険の見直しも貯蓄も、その目標に向けて具体的に動き出せます。年齢と返済期間の関係は住宅ローンを組む年齢の目安と団信の年齢制限の記事で紹介しています。
実際に借入先を選ぶ段階では、各金融機関の最新の金利や建て替えローンの条件をご自身でも確かめてから判断してください。