「年収の5倍以内」「返済負担率25%以内」は、どちらも安心の保証にはならない

住宅ローンは年収の5倍にしておけば安心というのは正しくありません
なぜ「年収の5倍」「返済負担率25%」という目安がひとり歩きしているのでしょうか…?

「住宅ローンは年収の5倍まで」「返済負担率は25%以内」という目安は、どちらも税込みの年収で計算し、返せる年数も家庭の価値観も考えていないため、そのまま信じると危険です。FPとしてお伝えしている現実的な線は、手取り年収の20%前後を年間返済額の上限にすること。たとえば年収500万円(手取り約391万円)なら、2026年9月のフラット35(年3.460%・35年)で借りられるのはおよそ1,590万円が目安で、「年収の5倍=2,500万円」とは大きな開きがあります。なぜそうなるのかを、実際に計算しながら説明します。

家を買うときに大切なのは、住宅にかける予算をいくらにするかという点です。FPとしてよくいただくご相談の一つでもあります。家を買うためのお金だけでなく、その家で暮らしていくためのお金も考えて予算を決める必要があります。どれだけ良い土地を買い、どれだけ良い家を建てても、それだけでは生活はできません。新居での家計をコントロールできなければ、せっかくのマイホームが家計を圧迫してしまいます。

とはいえ、良い家ほど高くなりますし、少しでも良い家に住みたいと考えるのは当然のことです。「どこまで背伸びしていいのか」「マイホーム貧乏になる境界線はどこか」と悩まれている方のために、まずは「常識」とされる2つの目安をシンプルな算数で計算してみましょう。

マイホーム購入予算の「常識」で予算を計算してみる

仮に、あなたの世帯年収が500万円だったとします。頭金として出せる金額は300万円としておきます。

「借入額は年収の5倍以内」で計算すると予算は2,800万円

借入額は年収の5倍以内なので、500万円×5=2,500万円以内にすべき、ということになります。これに頭金300万円を足すと2,800万円。この金額で家・土地・諸費用をまかなえば予算オーバーではない、という考え方です。

この計算で出た予算は2,800万円になります。

「返済負担率25%以内」で計算すると、金利しだいで答えが動く

返済負担率とは、年収に占める住宅ローン返済額の割合です。年収500万円・年間返済額100万円なら、100万円÷500万円×100=20%で、返済負担率は20%になります。

では、年収500万円の人が返済負担率を25%に設定した場合、いくらまで借りられるか確認しましょう。基本の考え方は、年間返済額が500万円×25%=125万円(月々約10万4,000円)以内なら問題ない、というものです。

ただし、ここが落とし穴です。借りられる額は「そのときの金利」で大きく変わります。たとえば金利が低かった時期(2023年ごろのフラット35はおおむね年1.8%前後)なら、年間返済125万円・35年返済で3,100万円ほど借りられました。しかし、2026年9月のフラット35(買取型・返済期間21〜35年・融資率9割以下)の最頻金利は年3.460%と、当時よりかなり高い水準です(8月の年3.290%から2か月続けて上昇。住宅金融支援機構「最新の金利情報」・2026年9月資金受取分)。同じ年間返済125万円・35年返済で試算すると、借りられるのはおよそ2,530万円まで下がります。頭金300万円を足すと、購入できる物件は約2,830万円程度という計算です。

つまり、同じ「返済負担率25%」でも、金利が上がった今は借りられる額(=買える物件価格)が以前より小さくなっているということです。金利上昇局面では、この点をとくに意識する必要があります。

「年収の5倍」と「返済負担率25%」は答えが一致しない

年収の5倍(2,800万円)と返済負担率25%(金利次第で2,800〜3,400万円)では、計算結果が違います。2026年9月の金利ではたまたま近い数字になりましたが、これは偶然で、金利が1%違えば数百万円の差が出ます。一体どちらを信じればよいのでしょうか…?

どちらも完全な間違いではありませんが、どちらも必ずしも正解とも言えません。その理由をこれから説明していきます。


オリコン・住宅ローン顧客満足度ランキング(2024年版)
オリコン・住宅ローン顧客満足度ランキングTOP5
ランキング・調査企業大手のオリコンが毎年実施している住宅ローンのオリコン顧客満足度®の調査結果が2024年8月に公表されました。

ソニー銀行が2年連続で1位に、2位には昨年同様にauじぶん銀行、3位には昨年も3位だったイオン銀行がランクインしています。
4位にはSBI新生銀行がドコモSMTBネット銀行が同率でランクインしています。1位のソニー銀行から4位のSBI新生銀行までの点数の差はほとんどありません。





「借入額は年収の5倍以内」がうのみにできない2つの理由

理由1:住宅ローンを払える「年数」を考慮していない

先ほどの世帯年収500万円・頭金300万円の例で説明します。
まったく同じ年収・頭金の人が2人いたとします。Aさんは25歳、Bさんは45歳です。2人とも「年収の5倍以内」で計算すれば2,800万円の予算になります。

返済できる年数で月々の返済額は大きく変わる

Aさんは35年返済でも完済時60歳です。一方Bさんは35年返済だと完済時80歳になります。さすがに80歳まで返済を続けるのは難しいので、65歳までの20年間で返したいと考えるでしょう。

2,500万円を借りた場合、2026年9月のフラット35(最頻金利 年3.460%)で試算すると、35年返済なら月々およそ10万3,000円、20年返済なら月々およそ14万4,000円になります。返済年数が違うだけで毎月の返済額が約4万円も変わるのに、「年収の5倍まで」という一つの計算でまとめてしまうのは危険だとわかります。年収500万円のBさんが、毎月14万円の返済を気持ちよく続けられるかというと、なかなか難しいでしょう。お子さんの教育費がかかるようになればなおさらです。

年収500万円というと、毎月の手取りは33万円くらいです。そのうち14万円が住宅ローン、ざっくり月1万円ほどが固定資産税に消えるとすると、残りは約18万円。ここから生活費・教育費・将来への貯蓄をまかなえるでしょうか。

このように、年収や頭金が同じでも、返済できる年数は人によって違います。だからこそ「年収の5倍以内なら問題ない」と考えるのは危険なのです。40代以降で借りるときの考え方は40代の住宅ローンはいくら借りられる?審査・頭金・平均借入額をFPが解説にまとめています。

理由2:使う「年収」が手取りではないから

もう一つの理由は、年収の取り方を間違えやすいからです。「年収の5倍・6倍」という計算に使われる年収は、ふつう「税込み」、つまり税金や社会保険料を払う前の額面金額です。

しかし、税金や社会保険料に消えるお金は、あなたが自由に使えるお金ではありません。使えないお金を予算計算に入れてはいけません。

税込みと手取りで借入可能額はこれだけ変わる

もし「借入額は年収の5倍以内」とするなら、計算する年収は「税込み」ではなく「手取り」で考えるべきです。年収500万円なら手取りは400万円ほどですが、家族構成によって税額が変わるので手取りも変わります。

手取りが違えば予算も変わります。仮に借入額が500万円違うと、毎月の返済額はどれくらい変わるでしょうか。2026年9月のフラット35(最頻金利 年3.460%)・35年返済なら、借入額が500万円増えると毎月の返済額は約2万1,000円増えます。たとえば毎月7万円に抑えたいと思っていたのに約9万円の支払いになると、住宅ローン返済計画だけでなく、生活やお子さんの教育に回せるお金まで変わってしまうかもしれません。

以上の理由から、「借入額は年収の5倍以内にすべき」という言葉が万能ではないことがわかります。

「返済負担率25%以内」がうのみにできない2つの理由

理由1:使う「年収」が手取りではないから

これは上で書いたとおりです。返済負担率の計算に使われる年収にも、税金や社会保険料など手元に残らないお金が含まれています。返済負担率で借入額を決めるなら、やはり手取りで計算する必要があります。

税込み年収と手取り年収では返済負担率がこれだけ違う

税込み年収で計算した返済負担率と、手取り年収で計算した返済負担率では、どれくらい違うか計算してみましょう。住宅ローンの返済額は毎月10万円、年間120万円とします。

  • 税込み年収で計算:120万円÷500万円×100=24%
  • 手取り年収で計算:120万円÷400万円×100=30%

同じ返済額でも、年収の取り方だけで「25%以内に収まる/収まらない」が変わってしまいます。個人的な感覚では、手取り年収400万円で毎月10万円の住宅ローンを払い続けるのは、なかなか厳しいと思います。お子さんを考えている、毎年旅行に行きたい、といった希望があるならなおさらです。

なお、銀行の審査で使われる「返済比率」も税込み年収が基準で、フラット35では年収400万円未満は30%以下、400万円以上は35%以下と定められています(住宅金融支援機構【フラット35】ご利用条件)。この上限はあくまで「貸せる上限」であって、「無理なく返せる線」ではない点に注意してください。審査に通る額と払える額は別物です。

理由2:あなたの価値観を反映していないから

「返済負担率25%以内に」という言葉は、家にかけるお金は収入の4分の1以内にしなさい、とお金の使い方を一律の枠にはめています(カードローンや自動車ローンの返済を考えない場合)。

しかし、人によって好きなものや考え方が違うように、何にどれくらいお金を使いたいかも人それぞれです。お子さんの教育、趣味、車――大切にしたいものは家庭ごとに違います。

もしお子さんに手厚い教育を受けさせたいと考えているなら、返済負担率25%でも「住宅ローンがきつい」と感じるかもしれません。逆に、子どもの頃から家を持つのが夢で、理想の家のためならどんなことでも我慢できるという人もいます。そういう人が無理に25%に抑えると、建てたい家を建てられず後悔が残るかもしれません。

このように、お金の使い方は人それぞれです。それを「返済負担率25%以内」という枠にはめてしまって、本当にあなたが望む暮らしができるでしょうか。

返済負担率が20%以内でも負担を感じることがあります

私自身、住宅ローンの返済額は手取り収入から計算して20%以内です。それでも、住宅ローン返済には負担を感じています。家を買ったあとで、自分にとって家の優先順位がそれほど高くなかったと気づいてしまったからです。

正直、もう少し家の金額を抑えて、毎日の生活を豊かにしたり旅行に使ったりした方がよかったな、と思っています。こう感じていると、家を買った満足度は高くありません。一生で一番大きな買い物ですから、後悔は残したくないですよね。

予算を考えるときは、マイホームへの価値観・優先順位を「冷静に」見つめる

家を買うことは、あなたの人生を幸せに・豊かにするための「手段」です。家を買うこと自体が人生の目的ではないはずです。

今は家がほしいと思ってこの記事を読んでいると思います。「今いちばん欲しいものは?」と聞かれれば「家!」と答えるでしょう。けれど、一生を通して考えたとき、家より優先順位が高いもの、あなたが本当に価値を感じているものはないでしょうか。そして家を買って住宅ローンを背負ったとき、その大切なものを犠牲にしてしまわないでしょうか。

住宅ローンを借りたあとでそれに気づいても、取り返すのは簡単ではありません。だからこそ、借りる前にじっくり考えることが大切です。

あなたの価値観を踏まえた予算の計算方法=キャッシュフロー表

「年収の5倍以内」「返済負担率25%以内」というあなたの価値観を無視した目安ではなく、家を買っても本当に大切なものを壊さない予算を知るには、キャッシュフロー表を作ることがいちばんの近道です。

マイホーム購入の資金計画で失敗しないためにはキャッシュフロー表が役立ちます

キャッシュフロー表を作れば、欲しい家を買うと住宅ローン返済がいくらになり、あなたが大切に思っているものを壊さずにやっていけるかどうかが見えてきます。「第二子が生まれたら」「金利が上がったら」といった条件を変えて試算すれば、不安の正体もはっきりします。

金利の前提も、いまは慎重に置いてください。日銀は2026年6月に政策金利を1.0%程度へ引き上げ、9月17日・18日の金融政策決定会合でも追加利上げの可能性が報じられています(結果は18日に公表されるまで確定ではありません)。変動金利で組むなら「今の金利のまま」ではなく、1〜2%上がった場合の返済額でもキャッシュフロー表が回るかを確かめておくと安心です。

手取り年収の返済負担率20%でいくら借りられる?(2026年9月の金利で試算)

最後に、手取り年収の20%を返済負担率とした場合に、フラット35でいくらまで借りられるかの目安を確認しましょう。

 フラット35の借入限度額
年収200万円/手取162万円約660万円
年収300万円/手取240万円約970万円
年収400万円/手取317万円約1,290万円
年収500万円/手取391万円約1,590万円
年収600万円/手取463万円約1,880万円
年収700万円/手取531万円約2,150万円
年収800万円/手取594万円約2,410万円
年収900万円/手取657万円約2,660万円
年収1000万円/手取720万円約2,920万円

※2026年9月のフラット35(最頻金利 年3.460%)・35年・元利均等返済で試算した目安です(当編集部試算・ボーナス返済なし・諸費用や団信の上乗せは含みません)。金利が上がると、同じ返済額でも借りられる額は小さくなります(8月の年3.290%で試算した前回より、各行とも30万〜70万円ほど下がりました)。

この表からも、返済負担率を手取りの20%にすると、税込み年収の5倍までは借りられないことがわかります。金利が上がった今は、その差がいっそう大きくなっています。「年収の5倍」「返済負担率25%」という目安はあくまで出発点とし、最終的には手取りベースのキャッシュフロー表で、あなたのご家庭に合った予算を見極めてください。年収別のより詳しい試算は年収400万円で住宅ローンはいくら借りれる?年収600万円で住宅ローン3000万円を借りるとどうなる?もあわせてご覧ください。

返済負担率についてよくいただくご質問

Q. 住宅ローンの返済額は手取りの何割までが目安ですか?

A. FPとしては手取り年収の20%前後、多くても25%までをおすすめしています。年収500万円なら手取りは月33万円前後なので、20%で月6万6,000円、25%で月8万2,000円ほどが上限の目安です。税込み年収の25%(月10万4,000円)で組むと、手取りベースでは30%を超えてしまいます。

Q. 手取りの25%で計算するにはどうすればいいですか?

A. 源泉徴収票の「支払金額」から所得税・住民税・社会保険料を引いた額(または毎月の振込額×12+賞与の手取り)が手取り年収です。それに0.25を掛け、12で割ると月々の返済上限になります。手取り400万円なら年100万円・月約8万3,000円です。

Q. 月々10万円・12万円の返済はきついですか?

A. 手取り月収で判断してください。月10万円なら手取り40万円(年収600万円台後半)、月12万円なら手取り48万円(年収800万円前後)あれば、手取りの25%以内に収まります。2026年9月のフラット35(年3.460%・35年)では、月10万円で約2,430万円、月12万円で約2,920万円が借入額の目安です。手取りが33万円で月10万円なら30%を超えるので、教育費や貯蓄との両立は厳しくなります。

Q. 銀行の審査に通れば、その額を借りても大丈夫ですか?

A. 審査の返済比率(フラット35で年収400万円以上は35%以下)は税込み年収で計算した「貸せる上限」です。手取りに直すと4割を超えることもあり、無理なく返せる線とは別物です。審査額ではなく、キャッシュフロー表で払える額から逆算してください。

なお、住宅ローンの借入先は地銀・信用金庫・ネット銀行・フラット35と幅広く、同じ予算でも金利や諸費用で総返済額が変わります。全期間固定のフラット35のほか、保証料0円・一部繰上返済手数料0円・一般団信0円など諸費用のわかりやすさで知られるSBI新生銀行なども含めて、手取りベースの返済計画で比較してみるとよいでしょう。地方では地銀・信金の変動金利も身近な選択肢です。金利・条件は変わりますので、最新は各金融機関の公式サイトでご確認ください。迷ったときは、中立的な立場のFPに一度ご相談ください。