マイナス金利政策とは

最初に「マイナス金利政策」について解説したいと思います。

金利がマイナスになるってどういうこと?

まず、「マイナス金利」の基本的なことを理解しておきましょう。難しい話ではないです。

一般的に金利は通常は0%より大きい、つまり「プラス」です。この通常の状態、つまり、プラス金利の状態だと、お金を預けている人がお金を預かった人から利息を受け取ります。たとえば、年利1%で100万円を預けたら1年後に1万円の利息を受け取ることができるので、101万円にお金が増えて戻ってくるといった状態です。

マイナス金利とは「金利が0%より小さい」状態のことを言いますので、例えば年利-1%で100万円を預けると、利息を受け取るどころか利息(正確には手数料)として1万円を払うことになるので、1年後に99万円になってしまうような状態のことを言います。

普通に考えるとお金を預けたのにお金が減るってあり得ないですよね。その通りでマイナス金利と言うのは普通だとありえない状態なのです。

いったい何がマイナス金利なの?

日本でマイナス金利政策が実行されたのは、2016年1月(本格的にスタートしたのは2016年2月)です。もう3年以上もマイナス金利政策は続けられていることになります。

まず、「政策」と言う名前がつくように「マイナス金利政策」とは、”銀行が日銀にお金を預けた時に適用される金利”をマイナスにすることを指します。私たち個人が日銀に直接お金を預けることはありませんので、「マイナス金利政策」が行われたからと言って私たちが銀行に預けているお金の金利がマイナスになることはありません。

また、銀行が日銀にお金を預けると日銀からお金を持って行かれる(必ず残高が減る)というように思えてしまうかもしれませんが、実際は日銀の当座預金(銀行が日銀に預けるお金)の残高は3種類に分かれています。1つ目は基礎残高、2つ目はマクロ加算残高、3つ目が政策金利残高です。銀行が日銀にお金を預けると①基礎残高部分、②マクロ加算残高部分、③政策金利残高部分に分かれていて、「マイナス金利政策」によって決められたマイナスの金利が適用されるのは③の政策金利残高部分だけです。①の基礎残高部分は年0.1%ですし、②のマクロ加算残高部分は年0%(ゼロ金利)が適用されています。

ここで、日本銀行がマイナス金利について説明しているPDFを紹介しておきます。日本銀行

マイナス金利政策の目的とは

このように「日銀はウチにお金を預けるとお金が減りますよ」という状態を作っているわけですが、「ウチにお金をあずけるな」と言っているようなものですよね。日銀が銀行に出したメッセージは「個人・法人から預かったお金をかんたんに日銀に預けないで、日本の経済を回すために使いなさい」というメッセージを発しているわけです。

銀行としては一定の基準(日銀が定めています)以上の割合で日銀にお金を預けるとお金が増えるどころか減ってしまうので、お金のやり場に困ることになります。

銀行としては「法人向けの融資を増やす」、「ベンチャー企業に出資する」、「お金を借りたいと思っている個人に貸す」ということを今までよりも考えなければならなくなるので、それが広げて日本経済を活性化・好景気に持っていき、インフレ目標(物価上昇率)を達成することが日銀が行っているマイナス金利政策の目的です。

マイナス金利と住宅ローン金利の関係

先ほど説明したように、銀行は私たちから預かったお金を貸したり、運用したりして収益をあげています。日銀にお金を預けるのも日銀にお金を貸しているようなもので、日銀に預けているだけである程度の利益がでる状況でした。しかも日銀が破たんすることはありえないので、ノーリスクで得られる利益があったわけです。

日銀から「もうそれ以上ウチに預けても利息払わないし、むしろ手数料とるからね」と言われた(部分的ですが)わけなので、銀行は様々な対策を考えなければならない状況になるわけですが、共通しているのは「お金を有効活用しなければならない」ということです。だからと言って破たんしそうな会社にお金を貸したり、返してもらえない人にお金を貸しては本末転倒です。

大企業への融資を強化したり、海外に進出したり、銀行によってその対策は様々ですが、その有力な対策の1つが住宅ローンの貸し出しを増やすことです。住宅ローンは、不良債権(貸し倒れ)リスクも低く、担保も取れるので優良な貸出と言われています。

銀行としては優良な貸出である住宅ローンの残高をとにかく増やしたいと考えるようになるわけです。そのように考える銀行は1つではなく、たくさんの銀行が同じことを考えるので競争が激化(金利引き下げ競争が進んだり、商品内容の改善競争が進んだり)するというわけです。

厳密には、住宅ローンの金利と連動する指標と言われている、短期金利・長期金利(国債の利回り)などの金利動向も影響したりなどありますが、結論としては「マイナス金利政策は住宅ローン金利の低下に大きな影響を与えている」ということになるわけです。

具体例・ジャパンネット銀行の住宅ローン参入

ちょうど2019年7月30日にジャパンネット銀行が住宅ローンに参入していて、住宅ローンの取扱いを開始した理由がわかりやすい構図になっていましたので、具体例として見てみましょう。この内容はジャパンネット銀行の住宅ローンに関する記事でも紹介していますので合わせて参考にしてください。

以下のジャパンネット銀行の住宅ローンの財務状態をまとめた表を見てください。

ジャパンネット銀行の財務状況

①の部分の預金は年々増加していて、2019年3月末の時点で8,000億円に達しています。②の貸出金も年々増加していますが預金が増えるペースに比べると1ケタ少ない伸びにとどまっていますし、④の要管理債権は「返してもらえないかもしれないお金」の残高を示しているのですが、貸出金を増やす中で「危ない貸し出し」も増加していることがわかります。

このように頑張って貸し出しを増やそうとしている様子をこの表から読み取ることができます。

③の有価証券は国債などで運用している残高ですが、2016年のマイナス金利政策以降、残高が伸び悩んでいて、安定的な利益をあげられる有価証券(債券や株式)を見つけられずにいる状況にあることがわかります。

このような状況に耐え切れず?と言って良いかはわかりませんが、ジャパンネット銀行は「預金残高の増加ペースに貸出残高の増加ペースが追い付かず、有価証券での運用も苦戦している」という状況の中で、満を持して「住宅ローンに参入して貸出残高を一気に増加させたい」と考えているに違いない、と予想することができます。

ジャパンネット銀行は日本初のネット銀行で、長い歴史がある中で、他のネット銀行が住宅ローンに力を入れている中で住宅ローンを提供することはありませんでした。

そのジャパンネット銀行が満を持して?住宅ローンに参入、しかも、変動金利で年0.415%という他の銀行よりも低い金利で参入してきたのは、銀行として住宅ローンの残高を増やして「預金超過・金あまり」の状態を解決したいという大きな目的があるため、と考えるのが自然です。

マイナス金利政策だけがジャパンネット銀行が住宅ローンに参入した理由とは言いませんが、少なくとも日銀のマイナス金利政策が大きく影響しているのは間違いありません。

そして、ジャパンネット銀行が超低金利で住宅ローンを提供することは、他の銀行の住宅ローンの金利がさらに下がっていく可能性もあり、住宅ローン業界全体の競争激化、また、住宅ローンがオトクになることで家を買おうかな・・・と思う人が増えて、それが”住宅・不動産市場の活性化”につながっていくような流れを後押ししていると言えます。

ジャパンネット銀行の住宅ローンが気になる人はこちらから

マイナス金利はいつまで続く(2019年・2020年も続く?)

国内の金利の動向を確認するうえでわかりやすい長期金利(10年物国債利回り)について、過去10年の推移を確認しておきましょう。過去10年の推移でみると2016年以降の金利がいかに低い水準にあるのかがわかります。過去を振り返ると歴史的な低金利下にあるのは疑いようがありません。

長期金利の推移

マイナス金利政策がスタートしてから3年以上経ちましたが、その間わずかな範囲で金利が上下することはありましたが、その動きの理由は日銀だけでなく、トランプ大統領の就任や米中貿易摩擦・北朝鮮を中心とする地政学リスクの高まりなど、日銀・日本だけでは解決しようがない問題が大半を占め、2019年8月時点で約3年ぶりに「長期金利がマイナス」になるという状況になっています。

また、日銀が「マイナス金利政策」を続けているのは、「安定的な経済成長(インフレ・物価上昇)」を実現したいからですが、残念ながら現時点においても日銀が求める安定的なインフレには到達していません。2019年10月には消費税増税が控えています。また、2020年夏以降はオリンピック特需の反動が予想されるなど、経済にマイナスの影響を与えるイベントも控えています。

もっと中長期的な視点で考えると、「少子高齢化」「未曽有の人口減少時代」「新興国の成長」と日本経済にプラスになる要因はほとんどありません。また、「マイナス金利政策」で金利を低く抑えていることで「国が支払う国債の利払い金額」を減少させることもできているので、国の財務状態にはマイナス金利政策がプラスに働いていたりもします

日銀がマイナス金利政策をいつまで続けるのかは誰にもわかりませんし、「常にいつまでも低金利が続くと思うな」という報道は経済ニュースを賑やかすと思いますが、現実的にはマイナス金利政策をやめるというタイミングは当面先、少なくともこの先3年間ぐらいは続くのではないかなと予想しておきたいと思います。

10年後もマイナス金利政策は続いている可能性は十分あるでしょう。

マイナス金利下の住宅ローン選びのポイント

最後にマイナス金利が続いている状況で住宅ローンを契約する際のポイントを押さえておきましょう。簡単に言うと「変動金利がいいの?」「固定金利がいいの?」という問題です。筆者は「変動金利が良い」と思っていて、実際に変動金利で住宅ローンを借り入れ中ですが、1つの正解があるわけではないので、ポイントを整理して最後は自分で選ぶことが重要です。

変動金利を選ぶメリットとデメリット固定金利を選ぶメリットとデメリット
住宅ローンの金利そのものが低いので総返済額を抑えられるのが最大のメリット。ただし、金利が上昇してしまうリスクがあるので「マイナス金利」が終わって、住宅ローンの金利が上昇してしまったら「マイナス金利で低い金利で借りれた」という恩恵もそこで終わることになる。

ただ、5年・10年もマイナス金利(低金利)が続けば、そのあとに金利が上がったとしても影響は小さいので、重要なのは借り入れから5年・10年先に金利があがるのか、という点。

住宅ローンの金利は変動金利より高いが、借り入れ時点で全返済期間の金利を固定できるので、「マイナス金利の低金利」の恩恵を全返済期間で受けられるということになる。

もし金利が上昇しなかったら変動金利で借りるより多額の利息を支払う必要が出てくるのがデメリット。毎月の返済額を完全に把握できるので、家計をコントロールしやすいという点はメリットの1つ。

どちらが正解かは現時点ではわからず、結果論になるだけなので直感で決めてしまっても良いとも言えますし、「どっちにしても低金利なのは違いない」という雑な解説をしてしまうとFPの人に怒られるかもしれませんが、筆者は「変動金利」で借りて、毎月の返済額を極力抑えて、貯金して備えるなり、繰り上げ返済を進める方法がベターだろうと判断して変動金利での借り入れ中です。

まとめ

  • マイナス金利政策は住宅ローンの金利低下に大きく貢献している
  • マイナス金利は歴史的に異常な状態なので永遠に続くわけではない
  • 今の日本経済はグローバル(世界)の影響を受けやすいので先を予測するのはとても難しい(専門家の予想も大外れするので注意)
  • 今後の日本経済を取り巻く環境は厳しい。日銀の思惑通りに日本経済が安定的に成長して”目標達成、マイナス金利終了!”とは言いにくい

少なくとも私たち住宅ローン利用者やこれから利用しようとしている人はマイナス金利政策が続くことにメリットは大きいです。銀行間の競争・商品性の改善が進み、より私たち利用者の為になる住宅ローンが開発されていくことを期待してこの記事を締めくくりたいと思います。