この記事では、マイホームを購入するための頭金についてお話ししていきます。特に、「頭金を貯め始める前にやるべきこと」を、FPの立場からお伝えできればと思っています。

家は買いたいけれど、「頭金が貯まっていない」「頑張っても頭金が貯まらない」と悩んでいる方はたくさんいます。この記事にたどり着いたあなたも、その1人かもしれません。

中には、これまで貯金(頭金)をほとんどしてこなかったにもかかわらず、急にお金を貯めようと思い立ち、日々の生活で節約に励んでいる方もいることでしょう。

頭金を貯める努力は決して悪いことではありませんが、頭金を貯めるために生活を切り詰める前に、やっておいてほしいことがあります。それは「頭金が無い、もしくは少ない今の時点で本当に家が買えないのか、頭金なしで住宅ローンを借りられないのか?」を確認することです。

マイホーム購入の指南書やインターネットの記事では、よく「頭金は2割必要です」「諸費用と合わせて3割用意したほうがいい」と解説されています。

そのため、頭金を2割・3割貯めてから家を買おうと考える方が多いのですが、その頭金がないと本当に家を建てられないのか、今のあなたの状態で家を買えないのか、ということをまず調べてみる必要があります。

まずは住宅ローンの審査を受けてみよう

具体的にどうしたらよいかというと、答えはシンプルです。住宅ローンの事前審査(仮審査)に申し込んでみることです。多くの金融機関では無料で、インターネットからでも申し込めます(一部、仮審査を行わず本審査のみで完結する銀行もあります)。

審査の結果、希望する借入金額を借りられるのであれば、無理に頭金を貯めるための時間や労力は、必ずしも必要なくなります。

もちろん、借り入れ後の返済負担を減らすうえで、頭金を貯めること自体は大切です。ただ、それと同じくらい、時間や日々の生活の幸せも大切だと筆者は考えています。「未来のために今を我慢しすぎる」のは、人生において必ずしも正解ではありません。

今の時点で本当に家を建てられないのかどうか、ぜひ一度調べてみてください。もしそれが実現できるなら、夢見ていたマイホーム生活が近い将来に手に入るということです。

「貯めてから買う」を選ぶ前に知っておきたい環境の変化

頭金を貯める期間をどれくらい取るかを考えるうえで、押さえておきたいのが足元の環境です。

  • 住宅価格は高い水準が続いています。国土交通省の不動産価格指数では住宅の価格は長期的に上昇して高止まりしており、2026年3月公表の公示地価も5年連続の上昇となりました。頭金を貯めている数年の間に、物件価格や建築費がさらに上がってしまう可能性は、残念ながら無視できません。
  • 金利のある世界に戻りつつあります。日本銀行は2026年6月に政策金利を1.0%程度へ引き上げており(1995年以来の水準)、住宅ローン金利も以前と比べて高くなっています。「貯まるまで待つ」戦略は、その間に適用金利が変わるリスクも織り込んで考える必要があります(最新の金利は各金融機関の公式サイトでご確認ください)。

つまり、「頭金が貯まるのを待つコスト」は以前より大きくなっている可能性があるということです。だからこそ、まず現時点で買えるかどうかを確認し、そのうえで貯めるかどうかを判断する——この順番をおすすめしています。

頭金なし(フルローン)でも家は買える?

結論からいえば、頭金なしでも住宅ローンを組める金融機関は珍しくありません。民間の銀行では物件価格の全額(いわゆるフルローン)に対応するところが多く、登記費用などの諸費用まで含めて借りられるローンも増えています。

全期間固定金利の【フラット35】も、融資率(建設費・購入価額に対する借入額の割合)が9割を超えても利用できます。ただし、融資率が9割を超える場合は、9割以下の場合より金利が高く設定されます。参考までに、2026年7月の【フラット35】の借入金利は年3.140%(返済期間21年以上35年以下・融資率9割以下・新機構団信付きの場合)です(住宅金融支援機構・2026年7月時点。金利は毎月見直されます)。

言い換えると、【フラット35】では物件価格の1割の頭金を用意できるかどうかで、適用される金利の区分が変わるということです。「2割・3割」をゴールにして疲れてしまう前に、まずは「1割」を目安にするという考え方もあります。

それでも頭金をしっかりと貯めたい人は・・・

慎重派で、やはり住宅ローンの頭金を貯めてからマイホームを買いたいと考えている方は、以下のステップを踏んで準備を整えるとよいでしょう。

現状の財務状況を把握する

  • 収入と支出の見直し
    月々の収入と支出を詳細に把握し、家計簿をつけることで、どれだけの余剰資金があるかを確認します。これが月々の貯金目標の基礎情報になります。
  • 負債の確認
    クレジットカードの残高や他のローンがある場合、それらの残高や金利を把握し、返済計画を立てましょう。クレジットカードの使い過ぎはもちろん禁物です。

貯蓄目標を設定する

  • 頭金の目標額を決める
    頭金の目標値を決めましょう。一般的には物件価格の20%を目安に頭金の額を設定すると、住宅ローンの審査や金利設定で有利になることが多く、1つの目安になります。前述のとおり【フラット35】なら融資率9割以下(頭金1割)が金利区分の目安です。借入額を抑えることは総返済額の圧縮にもつながります。
  • 貯蓄期間を決める
    そのうえで、頭金を貯めるために必要な期間を設定し、毎月の貯蓄額を算出しましょう。背伸びした目標額は日々の生活のストレスになることもあるので、現実的な目標にするよう心がけましょう。

予算計画を立てる

  • 貯蓄計画
    これまで検討してきたポイントから、貯金を進める計画を決定します。積立定期預金や給与口座からの自動振替など、「先取り貯蓄」の仕組みを利用すると続けやすくなります。なお、投資信託の積立や外貨預金など運用しながら増やす方法もありますが、購入時期が数年以内に決まっている資金は元本が変動する商品に偏らせないのが、FPとしての基本的な考え方です。
  • 無駄な支出の見直し
    無理しすぎる必要はありませんが、家計管理を行って無駄な支出を見つけ、それを削減して貯蓄に回す調整も有効です。できるだけストレスのない費用削減を優先させましょう。

予備のお金も考慮

  • 予備費用の準備
    住宅ローンの頭金以外にも、物件購入時には諸費用(登記費用、仲介手数料、引越し費用など)が発生します。頭金は目標額まで貯まったつもりでも、これらの費用に大半が消えてしまう可能性もあり、予備費は重要です。ただし、最近の住宅ローンでは諸費用も住宅ローンの一部として借りられるものが増えています。

FPとしてよくいただくご相談(FAQ)

Q. 頭金なしだと、住宅ローンの審査で不利になりませんか?

A. 審査は頭金の有無だけでなく、年収に対する返済負担の割合・勤続年数・ほかの借入状況・物件の担保評価などを総合して判断されます。頭金が多いほうが借入額を抑えられるぶん有利に働きやすいのは事実ですが、頭金なし=審査に通らない、というわけではありません。まずは事前審査で確かめるのが確実です。

Q. 頭金を入れるなら、貯金は全部使ってもいいですか?

A. おすすめできません。病気や失業に備える生活防衛資金(目安として生活費の半年分程度)と、登記費用・引越し代・家具家電など購入時にかかるお金は、頭金とは別に手元に残しておきましょう。頭金を厚くしすぎて手元資金が尽きてしまうほうが、家計にとってはリスクです。

Q. 徳島のような地方では、どこに住宅ローンの相談をすればいいですか?

A. 地方では地銀・信用金庫が身近で、対面でじっくり相談でき、地元の土地・物件事情に詳しいのが強みです。一方、金利や手数料の水準ではネット銀行も有力な選択肢です。両方の良さを求める方には、店舗相談とオンライン手続きの両方に対応しているSBI新生銀行のような銀行も比較候補になります。保証料0円・一部繰上返済手数料0円で諸費用の内訳が分かりやすいのが特長です(事務取扱手数料は借入金額×2.20%(税込))。複数の金融機関を比べて、ご自身に合う相談先を選んでください。

まとめ|「貯めてから」ではなく「確かめてから」

比較の観点今の状態で買う場合頭金を貯めてから買う場合
借入額・毎月返済借入額が大きくなり、毎月の返済負担は重くなりやすい借入額を抑えられ、返済負担を軽くしやすい
物件価格・金利いまの価格・金利で確定できる貯めている間に価格や金利が変わるリスクがある
暮らし・時間マイホーム生活を早く始められる節約が長引き、購入時期が先延ばしになりやすい

頭金づくりは大切ですが、順番としては「まず、今の自分が買えるかどうかを事前審査で確かめる」ことが先です。そのうえで、足りない部分・不安な部分を貯蓄で補っていく——この順番なら、時間もお金も無駄にしません。判断に迷ったら、お近くのFPや金融機関の相談窓口も活用してみてくださいね。