無料相談フォームに相談の入力があったので回答しました。マンションから一戸建てへの住み替えを考えるとき、多くの方が悩む「二重ローン(ダブルローン)」の問題です。FPとしてよくいただくご相談のひとつですので、考え方を整理してご紹介します。
相談内容は以下の通りです(※本相談は過去にいただいたものです。制度・税金・金利に関する記述は2026年9月時点の情報に更新しています)。
10年前に分譲マンションを購入して、九州居住中です。4月の地
震では、随分揺れて妻がやはり戸建が良いと、転居を検討中です。
マンションの残債は、1200万。私は38歳で手取年収440万、妻は36
歳手取年収320万、子供は小学生二人、マンションの 売却査定は15
00-1700万、マンションは、妻が所有者で持ち分10割、ローンも妻
名義です。検討中の新築戸建注文で3000~3300万、頭金は500~700
万、住宅ローン控除を考えた比率で、ローンと持ち分比率を考える
予定です。まずは、マンションの売却から手をつけて、一時引っ越
しをして、売り先行で行きたい私と、 引っ越しが面倒だから戸建
を私単独ローンで買い先行で行きたい妻がいます。確かに一時転居
の費用は掛かるのですが、売れずに家庭内二重ローン状態で新居を
購入するのは、私としては、危険と思うのですが、如何でしょうか
?ありなのでしょうか?
マンションを売却して一戸建てを購入する予定だが、売れるまで仮住まいに住んでおき、売れてから購入する(売り先行)か、それとも二重ローンを覚悟で先に購入しておく(買い先行)のとどちらが良いかということですね。
売り先行・買い先行・住みながら売却の比較
前者(売り先行)のデメリットは仮住まいにかかる費用と手間です。後者(買い先行)のデメリットは、マンションが売れなければその間は住宅ローンを二重払いする必要があることですね。それぞれの特徴を整理すると次のようになります。
| 進め方 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 売り先行(売却→仮住まい→購入) | 売却代金が確定してから資金計画を立てられる。二重ローンにならない | 仮住まいの家賃・引っ越し2回分の費用と手間がかかる |
| 買い先行(購入→引っ越し→売却) | 引っ越しが1回で済む。新居探しに時間をかけられる | 売れるまで二重ローン。焦って値下げしやすく、審査でも旧ローンが負担になる |
| 住みながら売却(居住中に売り出し→引き渡し時期を調整) | 仮住まい不要で二重ローン期間を最小化できる | 内覧対応の手間。引き渡し時期の条件次第で価格交渉が入りやすい |
なお、2026年9月1日には長期金利(新発10年国債利回り)が一時3.000%と約30年ぶりの水準まで上昇し、フラット35や銀行の固定金利は上がりやすい局面が続いています。全期間固定のフラット35(買取型・借入期間21〜35年・融資率9割以下)の最頻金利は、2026年9月実行分で年3.460%と、現行の金利算出方式になった2017年10月以降で最も高い水準です。また、9月17日・18日には日本銀行の金融政策決定会合が予定されており、変動金利のもとになる政策金利の行方にも注目が集まっています。住宅ローンは申込時ではなく融資実行時点の金利が適用されるのが一般的なので、売り先行で計画が長引く場合は、その間に金利が動く可能性も資金計画に織り込んでおきたいところです。ただし、金利を理由に売却を焦って安売りしては本末転倒ですし、この先の金利を言い当てることは誰にもできません。最新の金利は各金融機関・住宅金融支援機構の公式サイトでご確認ください。
夫婦で住宅ローン控除を使うなら選択肢が狭くなる点に注意
もう一つ、先に一戸建てを購入してしまうことの注意点は、夫婦で住宅ローン控除(住宅ローン減税)を受ける場合、住宅ローンの選択肢が狭くなってしまうことです。
住宅ローン控除を夫婦それぞれで受けるためには、夫婦二人のペアローンにするか、収入合算(連帯債務型)にする必要があります(連帯保証型の収入合算では、合算者は控除を受けられません)。
贈与税のことまで考えるなら、資金負担の割合に応じて土地や建物の持ち分も分けておいた方が良いでしょう。
マンションの住宅ローンは奥さん名義になっているということなので、それが残ったまま一戸建ての住宅ローンを奥さん名義で新たに借りることや、収入合算者として収入を合算するのは難しいと思いますので、原則はご自身一人での借り入れを想定しておくべきです。
一方で、本当に夫婦で住宅ローンを分ける必要があるのかも検討した方が良いですね。ご主人の手取年収440万円ということであれば税込み年収は550万円くらいかと思いますが、税込み年収550万円で3,000万円の借り入れができれば、住宅ローン控除の枠はご主人一人でも相当程度使えると考えて良いでしょう。
現在の住宅ローン控除は、年末ローン残高(借入限度額まで)×0.7%を、最大13年間、所得税(と住民税の一部)から控除する制度です。2026年度税制改正で適用期限が2030年12月31日入居分まで5年間延長されました。注意したいのは、2024年以降に建築確認を受けた新築住宅は、省エネ基準を満たさないと住宅ローン控除の対象外になっている点と、住宅の省エネ性能(長期優良住宅・ZEH水準・省エネ基準適合)によって借入限度額が変わる点です。19歳未満のお子さんがいる子育て世帯には借入限度額の上乗せ措置もあります。新築の注文住宅を検討されるなら、省エネ性能がどの区分に当たるかを必ず住宅会社に確認してください。さらに、2028年(令和10年)以降に入居する場合は「省エネ基準適合住宅」も原則として控除の対象外となり、ZEH水準以上の性能が求められる予定です。土地探しや設計に時間がかかり入居が先にずれ込みそうな方は、この点も含めて性能区分を検討してください(制度の詳細は国土交通省・国税庁の公式サイトでご確認ください)。
正確な税込み年収や住宅ローンの借入額、住宅の性能区分が不明なので、ハッキリしたことは言えませんが、この規模の借り入れであれば、ご主人だけの住宅ローンでも控除の恩恵は十分に受けられるケースが多いと思います。
「住みながら売る」という第三の選択肢
また、実は、もう一つの選択肢があります。それは、今住んでいるまま売りに出すという選択です。
そのまま新しい家の計画を進め、もし早めに売れてしまうようであれば新しい家が引き渡しになるまで待ってもらうという条件をつけて売る、というやり方です。
その分値段を少し下げるか、売買契約から実際の引き渡しの間だけ買い主に対して家賃を支払う方法もあるでしょう。
こうすれば、引っ越しの手間や費用は二重にかかりません。
うまく新しい家が引き渡しになるまでに売れてくれれば二重ローンは防げますし、早く売りに出せるので買い手が見つかるのも早くなります。その分二重ローンになる可能性を減らせます。
私自身はこの方法で家を売って住み替えをしました。
二重ローンになるにしても、何年も何年も売れないということはないと思うので、今欲しいと思われている物件があるということでしたら早めに動かれた方が良いと思います。
売らずに賃貸に出す選択肢と税金の注意点
また、売らずに賃貸に出すという選択肢もありますね。ただし、住宅ローンは「自分が住むための家」への融資なので、ローンを残したまま賃貸に出すことは原則として認められていません。無断で賃貸に出すと契約違反(資金使途違反)になり得ますので、必ず借り入れ中の金融機関に事情を説明し、認めてもらえるか相談しましょう(転勤などのやむを得ない事情では認められる場合があります。認められない場合は、賃貸用のローンへの借り換えが必要になることもあります)。
賃貸に出せば家賃収入は不動産所得として申告することになります。ここで注意していただきたいのは、賃貸に出せば自動的に節税になるわけではないという点です。節税につながるのは、減価償却費や管理費・修繕費などの経費が家賃収入を上回って不動産所得が赤字になり、給与所得と損益通算できる場合です。逆に不動産所得が黒字になれば、その分の所得税・住民税は増えます。マンションの築年数や経費の内訳によって損益は大きく変わりますので、賃貸に出す前に収支をシミュレーションし、具体的な税務の扱いは税務署や税理士に確認することをおすすめします(不動産所得の基本は国税庁タックスアンサーでも確認できます)。
住み替えの二重ローンに関するFAQ
Q. マンションの売却益にかかる税金の特例(3,000万円特別控除)と住宅ローン控除は両方使えますか?
A. 併用できません。マイホームの売却益に使える「居住用財産の3,000万円特別控除」を使うと、新居の入居年とその前後一定期間は住宅ローン控除が受けられなくなります。売却益の大きさと住宅ローン控除13年分の節税額を比べて、どちらが有利かを試算してから選ぶ必要があります(詳細は国税庁タックスアンサーNo.3302等でご確認ください)。今回のご相談のように残債1,200万円・査定1,500〜1,700万円のケースでは、諸費用を引くと売却益はそれほど大きくならないことが多く、住宅ローン控除を優先する方が有利になりやすいでしょう。
Q. 逆にマンションが値下がりしていて、売却損が出たらどうなりますか?
A. 住み替えのためにマイホームを売って譲渡損失が出た場合、一定の要件を満たせば、その損失を給与所得などと損益通算し、引き切れない分は翌年以後3年間繰り越せる特例があります(買換えの場合の譲渡損失の損益通算・繰越控除)。こちらは住宅ローン控除と併用が可能です。要件が細かいため、該当しそうな方は国税庁タックスアンサーNo.3370等でご確認ください。
Q. 旧居を売らずに賃貸に出した場合、旧居の住宅ローン控除はどうなりますか?
A. 住宅ローン控除は「自分がその家に住んでいること」が要件のため、転居して賃貸に出した年以降、旧居分の控除は受けられなくなります。転勤命令などやむを得ない事由による転居で、あらかじめ税務署へ届出をしておけば、再びその家に住んだときに残りの期間について再適用を受けられる制度はありますが(賃貸に出していた場合は再入居の翌年から)、住み替え目的の転居は対象外と考えておくのが安全です。詳しくは国税庁タックスアンサーNo.1234でご確認ください。
Q. 旧居の残債があると、新居のローン審査は不利になりますか?
A. 既存ローンの返済額も含めて返済負担率が審査されるため、残債が大きいと借入可能額は減ります。今回のご相談は旧居が奥さん名義・新居がご主人名義と分かれているため影響は比較的小さいですが、同一名義で住み替える場合は、旧居の残債と売却代金の差額を新居のローンに上乗せして借りられる「住み替えローン(買い替えローン)」を扱う金融機関もあります。金利や条件は通常の住宅ローンと異なるため、各金融機関の公式サイトでご確認ください。なお、新居のローンを選ぶ際は、保証料や繰上返済手数料が0円で、金利上乗せなしの全疾病保障付団信も選べるSBI新生銀行のようなネット系・新形態の銀行も含めて比較すると、二重ローン期間の負担を抑えやすくなります(2026年9月時点。最新の金利・条件は公式サイトでご確認ください)。
Q. 買い先行で二重ローンになった期間、家計がきついときはどうすればいいですか?
A. まず「二重ローンは一時的なもの」と割り切り、その期間の家計収支を書き出して、どのくらいの期間なら耐えられるかを把握しましょう。そのうえで、旧居の売却活動を後回しにしないことが最大の対策です(媒介契約の内容や売り出し価格の見直しも含めて、不動産会社と定期的に状況を確認します)。それでも返済が苦しくなりそうなときは、延滞してしまう前に借り入れ中の金融機関へ早めに相談するのが原則です。返済が厳しいときの考え方は「住宅ローン返済がキツいと感じたときにできる3つのこと」でも詳しく解説しています。
以上です、参考になれば幸いです。住み替えは「売る・買う・借りる・税金」の4つが絡む総合戦です。お住まいの地域の相場観も踏まえて、無理のない順番で進めてくださいね。